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信梨は、歩美とともに第1美術室に向かっていた。
信梨が前で歩美が後ろという並びで歩いていたのだが、
「信梨ちゃん、ひとりで乗り込むのはやっぱり危険なんじゃ……」
歩美が心配するのには理由があったからだ。
「だって、第1美術室には美術部員が大勢いるんだよ?サッカー部だけを相手にっていうのは、流石に無理があるんじゃ……」
「そりゃそうかもしれないけど……もう冴に任せろって言ったからなー。しょうがないしょうがない」
信梨はわざとらしく腕を組んで2回うなづいた。
「……」
歩美は相変わらず、心配そうな眼差しを向けるだけだった。
山路と雪が喧嘩しているところに、尚が入り込み、三つ巴で入り乱れていた。
そのすぐ近くには一楓と流が言い合いをしている。
そして、彼らの様子を、絵菜と海、皐月が黙って見ている様子だった。
そして、後ろに無駄な世間話をしている後輩のみ。
そんな呑気なもの達に、1人刺客が現れる。
「あ!!やっぱりここにいたんだね!!海!!」
親戚の声が聞こえ、海は肩を震わせた。
「こ、信梨!!」
海は驚きのあまり、後退りをしてしまった。
そして彼女のオーラ、というか、雰囲気というか、そんなものが海の後ろにいた後輩たちを退かした。
「こ、信梨。怒ってる?」
「まあ、ちょっとね……」
信梨はハンドガンを片手にゆっくりと海に近づいて行った。
「まさか、忘れたわけじゃ無いでしょうね」
「はっ?あ、えーと……」
信梨に問いただされ、海は思い当たる節があるのか、たじろいだ。
「あ、分かった。謝るから、とりあえずその銃下ろそうか?」
「……」
信梨は別に海に対してそこまでの苛立ちはないが、ただ単純に、怯えたり、驚いたりしている顔が面白いので、こんなことをしているのだ。
しかしまあ、いくら面白いといってもここまでやるってことは、相当なドSでもない限り、こんなことまではしないだろう。
「俺、ここにいる意味あるかな?」
皐月は無表情のまま、放心状態で雪と山路の喧嘩を見ていた絵菜に聞いた。
「……あー……ないと思う」
絵菜が遠い目をしたまま言うと、皐月は「そっか」と言った。
「ねえ、山路以外みんなゼッケン真っ白だね。他のチーム見に行ったけど、サッカー部と美術部のインクがついたチーム見てないけど……もしかして……まだ誰にも攻撃してないの?」
歩美がそう聞くと、二人は、阿吽の呼吸で首を縦に振った。
「えー!!もうあと10分しかないよ!!」
歩美がそう言うと、2人は死んだ魚のような目で、未だに口喧嘩をしている山路と雪を見つめた。
「まあでもこの際勝ち負けとか関係なく、このカオスな状況を、俺たちがどうにかしないと行けないんじゃないか?」
皐月が冷静に分析し、隣にいた絵菜に言うと、絵菜は、魂が抜けたような顔のまま時計を指さし言った。
「……あの時計10分ズレてるの」
「……は?」
皐月が呆れたように、珍しく感情のこもった声を出した時、キンコンカンコン、と放送が鳴った。
放送が鳴った直後、全チームが運動場に集まった。
あの場で唯一まともだった絵菜と皐月、歩美の三人は問題児3組を見ていたが、3組とも変わらず喧嘩していた。
「……はぁもうほんっとに馬鹿だなー……」絵菜は雪たちの隣で独り言を呟いた。
「この2人はいつまで話し合うんだろう……」皐月は、流の隣で一楓との言い合いが終わるのを待っていた。
「この親戚二人の喧嘩はいつ終わるんだろう」ついに口喧嘩にまで発展した、いとこ二人の喧嘩は、いつまで続くのか、隣で歩美は、呆然自失と言わんばかりに見つめていた。
そして、ついに生徒会の彼方倫が、朝礼台の上に上がって行った。
「皆さんお疲れ様です。先程集計したところ、1位は女子テニス部です。私は女子テニス部なので、勝ったことが凄く嬉しいです」
どうやら勝ったのは女子テニス部らしい。
自分の部活が勝ったことで、倫はかなり上機嫌な様子だ。「というわけで、女テニは、皆さん景品を自由にお選びください!!」
倫が快活な声でそういった時に、全員が、歓声を挙げた。しかし、1人だけ声ではなく、手を挙げていた者がいた。
「あの!!逆に1番点数の低かった人に景品を買ってもらうというのはダメですか?」
そう言ったのは、信梨だった。
「おいおい信梨。いくらなんでもそれは……」
「良いですよ」
「んえ!?」
海は驚いて思わず情けない声を出してしまった。
良いと言ったのは、生徒会書記の佐渡文華だった。
「今、サッカー部のどっかの誰かさんに美術室のドアを蹴破られたから凄くイライラしてるんだよね〜」
文華は指をポキポキ鳴らしていた。