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その夜、こさめは眠れなかった。
ベッドに入っても、すちの言葉が頭の中をぐるぐる回る。
『その子を一番傷つけた』
静かな声だった。
まるで、自分に罰を与え続けてる人みたいな声。
🦈「……なんなんだよぉ、もう」
枕に顔を埋める。
分からない。
すちが何をしたのか。
何を抱えてるのか。
でも——。
(そんな顔、しないでほしい)
あんな苦しそうに笑わないでほしいと思ってしまった。
翌日。
こさめはいつもより早く独房区画へ向かった。
朝の廊下は冷える。
静かな空気の中、こつこつと足音だけが響く。
そして、すちの独房の前まで来た時だった。
🦈「……え」
こさめは足を止める。
すちは壁にもたれたまま座り込んでいた。
顔色が悪い。
呼吸も浅い気がする。
🦈「すちさん!?」
慌てて駆け寄る。
すちはゆっくり顔を上げた。
🍵「あー……おはよ」
🦈「おはよじゃないです!!」
こさめは半泣きになる。
🦈「顔真っ白じゃん!!」
🍵「大丈夫……ちょっと熱あるだけ」
🦈「ちょっとに見えない!」
すちは苦笑する。
でも、確かに辛そうだった。
額には汗が滲んでいる。
こさめは慌てて無線を取った。
🦈「医務呼びますから!」
その瞬間。
鉄格子の隙間から、すちの手が伸びる。
🦈「……っ」
袖を軽く掴まれた。
熱い。
びっくりするくらい熱い手。
🍵「呼ばなくていい」
🦈「なんで!?」
🍵「大げさになるから」
🦈「なるに決まってるでしょ!」
こさめは思わず声を荒げる。
🦈「すちさん、自分のこと雑すぎる!」
🍵「……」
🦈「怪我した時もそう! なんでそんな平気な顔するの!」
すちは少しだけ目を丸くした。
こさめの声は震えていた。
怒っているというより、必死だった。
🍵「こさめくん」
🦈「やだ」
🍵「え」
🦈「誤魔化されません」
涙目のまま睨み返す。
🦈「こさめ、看守だから。仕事だから」
言いながら、自分でも驚く。
でも、それが本音だった。
守られてばかりなのが嫌だった。
すちばかりが痛そうなのが嫌だった。
すると、すちは静かにこさめを見つめる。
その目が少し揺れた。
🍵「……なんでそんな必死なの」
こさめは言葉に詰まる。
なんで?
そんなの、自分でも分からない。
でも——。
🦈「……大事だから」
気づけば口から零れていた。
空気が止まる。
こさめ自身も固まった。
(え)
今、自分なんて言った?
顔が一気に熱くなる。
🦈「ち、違っ……!」
慌てるこさめを見て、すちはしばらく黙っていた。
やがて、ふっと笑う。
でもその笑顔は、どこか泣きそうだった。
🍵「……ほんとにだめだなぁ」
🦈「え」
🍵「そんなこと言われたら」
熱のある手が、そっとこさめの指先を撫でる。
🍵「期待しちゃうじゃん」