第二章 兄と妹
エピソード9
「また、たばこ吸ってる。きもっ」と鼻を啜りながら未来はいう。
俺はたばこを灰皿に入れて消す。
「フラれたのか?」と俺はそれとなく聞く。
「うーん。まぁね。」と未来は応える。
未来は俺の少し離れた場所にちょこんと座る。
「だから、別れろって言ったのに」と俺はぼやく。
「そう言えばさ、私が小さい頃からお兄ちゃんよく守ってくれてたよね。今回は、守ってくれなかったけど。」と未来はいう。
「俺さ、昨年彼女を事故で亡くしてて」
と俺はいう。
「事故って、交通事故?」と未来は聞く。
「そう。その日、久しぶりに彼女と会う約束してて、何時間経っても待ち合わせ場所に現れなくてさ、そしたら携帯が鳴って、出たら救命士でさ、総合病院に来てくれって言われて、言ったらもう彼女死んでて。俺、どうしたらいいか分からなくてさ。」と続けて語りだす。
「そんな事があったの?なんで家族に言わなかったの?」と未来は聞く。
「自分の中で整理つかなくなってさ、バイトして、どっかで現実逃避しようと目の前のものから逃げてたんだ。」と俺は悲しげにいう。
「ちゃんと彼女と向き合ってあげて。じゃないとお兄ちゃんと、一生口聞かないよ?」と未来はいう。
「たばこもその事と関連してる?」と続けて聞く。
「なんでも、お見通しだな。お母さんに似たな。」と俺は笑う。
ふふふっと未来も笑う。
「なんか、フラれたのどうでも良くなってきた。またお兄ちゃんに助けられたな。」と未来はいう。
「学校は休まず行けよ。」と俺はいう。
「休もっかなー」と笑いながら未来はいう。
「行けよ。」と笑いながら俺もいう。
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