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隣で寝ている克巳さんを気にしながら、ゆっくりと躰を起こしてみる。
「……っ、痛っ! ちょっと頑張りすぎちゃったかな」
時計を見ると、午前三時過ぎ――彼を起こさないように寝返りをうったら、腰に激痛が走った。あまりの痛さに顔をしかめてしまうレベルって、どんだけ。
「回数より質というか。いいモノをお持ちだったせいで、自ら腰を使っちゃったし、しょうがないね♪」
ベッドからゆっくりと腰を上げ、振り返って克巳さんの寝顔を見てみる。イビキもかかずに、うつぶせのまま死んだように眠っていた。
「こういうあどけない顔してるトコに、惹かれちゃったのかも。リコちゃんってば、趣味がいいからなぁ」
そっと頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに身じろぎし、口元に笑みを湛えた克巳さん。もしかしたらリコちゃんも、俺と同じことをしているかもね。こんな表情を見たら、手を出さずにはいられないから。
物音を立たないように気をつけて、真っ直ぐ浴室に向かいシャワーを浴びる。
そして数分後バスローブに身を包み、タオルで髪の毛の水分をしっかりと拭ってから、ハンガーにかけてある克巳さんの上着に手を伸ばした。迷うことなく、ポケットの中身をチェックする。
スマホの手ごたえを感じ画面を見てみると、ロックはかかっておらず、さくさくと中身を拝見することができた。
(わーお♪ 着信履歴が26回もあるじゃん。さっすがリコちゃん! 心配しちゃったんだ)
最終着信履歴が午前一時すぎ――この時間なら確か、激しくヤっちゃってる真っ最中のところだよ。
先ほどまでの行為をちょっとだけ思い出し、あちこちチェックしていて、ふと気がついた。リコちゃんの電話番号とメアドは知ってるけど、克巳さんのは知らなかった。
「俺のスマホに転送しちゃお♪ ついでに克巳さんのに、俺の情報を入れてあげちゃうとか、すっげー優しい」
自画自賛して操作してから、寝室に足を運ぶ。ベッドで安らかに眠っている克巳さんの鼻を、ぎゅっと摘んだ。ちょっとSな起こし方かな。
「……っ、んんっ?」
「おはよ、克巳さん」
顔を寄せて、ちゅっとモーニングキスしてみる。ぼんやりしたまま俺を見上げる姿は、本当に無防備そのもの。
「ごめんね、朝早く。これから早朝ロケが入ってて、仕事に行かなきゃならないんだ。悪いけど、今すぐに起きてくれるかな?」
「ああ、そうなんだ。ゴメン、すぐ着替える」
「あとね。これなんだけど――」
慌てながら起き上がった克巳さんに、彼のスマホを手渡した。自分のスマホの着信履歴を見て、すっと顔色を変える。
(克巳さんの愕然としたその顔、笑いを堪えるのに必死なんですけど!)
「リコちゃん心配して、何度もコールしたんだね」
俺の言葉に克巳さんは口元を押さえ、難しい面持ちで考え込む。
(ふふっ、困ってる、超困ってる。まぁ苛めるのは趣味だけど、昨夜は随分と楽しませてもらったから、助け舟を出してあげよ)
「克巳さんは俺の家で話し合いをしながら、お酒を呑んでいました」
「え――?」
「途中でどっちが強いか、呑み比べをしている最中、ふたりして酔い潰れてしまった。――っていう筋書きを考えたんだけど、どうかな?」
俺はバスローブを脱ぎ捨て、さっさと着替えを始める。
「……稜?」
「俺とヤっちゃったこと、絶対に知られたくないでしょ。この筋書きをリコちゃんが納得してくれるかどうかは、わらないけどね」
とっとと着替えろと言わんばかりに、床に落ちていた克巳さんの下着を、ぽいっと投げつけてあげた。浮かべている表情は暗いままなれど、何とか頑張ってもらわないといけないんだよ。
「信じてもらえるような演技、ヨロシク頼むよ克巳さん!」
俺の立てた筋書き通りに、動いてよね。これでまた一歩、俺が彼女に近づくことができるんだから♪