莉心side
今日はよく晴れた。
散歩日和だなーと思いながらゴミ出しに行くと。
「お姉さん!奇遇だね!」
…案の定これだ。
この調子では安心して仕事にも行けない。
私は仕事上、自分自身について偽らなければいけなかった。
つまり、自身のことを知られたくないということ。
なのでコナンくんたちに正体を探られるのは
…正直、避けたかったのだが。
「…世間って狭いなぁ。」
「どうかした?」
「いや、なんでも。」
だってゴミ出し行くだけで数少ない知り合いと遭遇するとかあるか!?
ねーだろ、普通。
「あ、そうだ莉心お姉さん。
今日は僕の友達を連れてきたんだ!」
コナンくんのお友達…?そんなの。
色んな意味でろくな人じゃない気がする。
私の予想は当たった。
「…よろしく。」
とても大人びた女の子だった。
「よろしくね!私の名前はもう聞いているかな?」
「ええ。水篠莉心さんね。私は灰原哀って言うの。」
「哀ちゃん!よろしくね!」
この子も偽名使ってるし。
何なの?私の周り偽名だらけじゃない。
もう呆れるしかなかった私をよそに、
哀ちゃんとコナンくんはなにやら真剣な顔で、
こっちを向いて話している。
その気になれば聞ける会話だが、盗み聞きしすぎるのもな…と思い留まった。
「ねぇ、お姉さ…」
そういうと哀ちゃんは何故か目を見張った。
「…っ!」
「おい灰原。…どした!」
コナンくん。…本性隠すの忘れてるよ。
…なんて、そんな呑気なことを言っている場合じゃない。
「大丈夫!?」
「…た、多分虫でもいたんだと思うよ~」
と、バレバレな嘘をつくコナンくん。
…ここはなにか知っているらしい彼に任せた方がいいかな。
「じゃあ…私は戻るね。
ゴミ出しに来てて…まだご飯食べてないし。」
「じゃあポアロで食べていきません?」
見るといつの間に居たのか安室さんが笑顔で喋りかけてくる。
…勘弁して。
「いえ…もう作ってあるので。大丈夫です。」
「そうですか…また機会があれば寄ってくださいね!」
「機会があれば、寄りますね!」
私もお返しとばかりにわざとらしく満面の笑顔で、「機会があれば」を強調して返す。
とりあえず家に戻ろう。引っ越してきてからろくな事がない。
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