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それから3日後。今日は撮影予定の日だが、時間になっても凜は姿を現さなかった。
いつも10分前集合を全員に課している彼が遅刻するなんて珍しいことだ。
「凜さん遅いね」
「……いつもだったら一時間以上前から待機してるのに」
「まさか事故に遭ったとか? おい、オッサン。何かしらないのかよ」
不安そうにしている雪之丞に対し、同じく心配そうな顔で答えたのは美月だ。他のメンバーも落ち着かない様子であちこち見渡している。
「僕もさっきから連絡してるんだけど、繋がらないんだ」
「え? それ、大丈夫なの? 凛さん、時間間違えたとかの可能性は?」
「ナギ。それはないと思う。兄さんは現場が何よりも好きな人だから」
それだけは断言できる。彼は何よりもこの空間が好きな筈だ。時間を違える筈はないし、もし仮に時間の変更などがあれば連絡の一つくらい寄越すはずだ」
一体、どうしたというのだろう? 不安に思いながら既読のつかないトークアプリを睨みつけると、蓮はそわそわと落ち着かない気持ちで控室の椅子へと腰かけた。
しばらくすると扉が開き、待ち望んでいた人物の姿が見えた。
「すまない。お前たち、遅くなって悪かった」
「あっ、凛さん!」
「どうしたんだよ! 遅刻なんて珍しいじゃん!」
遅れて到着した凜はどこか疲れた様子だった。眼鏡がズレているし、髪の毛も少し乱れている。それに目の下にうっすらと隈ができているようで顔色も悪い気がする。
「兄さん、大丈夫なのかい?」
「……問題ない。ちょっとした表現力の違いというヤツだ」
「え?」
表現力とは? 蓮の頭の中に疑問符が沢山浮かんでくる。
凜は、コホンと咳ばらいを一つすると、集まったメンバーたちを見渡し、改めて遅れたことへの謝罪を告げた。
「改めて。お前たちには本当に申し訳ないと思っている。遅れてすまなかった。だが今回はどうしても外せない案件があった為、遅くなった」
「外せない案件? 」
「あぁ。――紹介しよう。もう入って来てもいいぞ」
その言葉に皆の表情に緊張が走った。
一体どんな人物がやって来るのか、固唾を呑んで見守る中、凛の後ろから現れたのはスラリとした長身の男。
細身でツーブロックがよく似合うクールな印象。年の頃は20代前半くらいだろうか?
「――え……っ」
一昔前に自分が好きだと思っていた男に良く似た風貌に、蓮は思わず目を見開いた。
「初めまして。えーっと……銀次です。先日、御堂さんから直接コラボ企画のお声がけをいただいて、喜び勇んでやってきました。こうして皆さんに会えただけでも嬉しいっす」
そう言って、銀次は慣れた様子で綺麗に一礼をする。その名前にすかさず反応したのは美月だった。
「えっ!? 銀次って、最近動画配信でよく話題になってる、あの銀次さん……? 凛さん本当に連れて来ちゃった」
「ハハッ、すっげ! 本物だ……。御堂さんやっぱすっげ!」
美月の言葉に、興奮を抑えきれず東海が飛び上がるように立ち上がる。
「すごいです。この度はわざわざ足をお運びくださりありがとうございます」
弓弦が丁寧にお辞儀をすると、美月と東海もそれに倣うようにして頭を下げた。
「わわっ! 本物の草薙弓弦だ!! やっばっ! そんな畏まらないでください。俺の方こそ有名な方達とコラボ出来ると聞いてワクワクして来たんですよ」
緊張した様子もなく自然体で答える青年を蓮は複雑な面持ちで凝視していた。
見れば見るほど、長い事恋を拗らせていた相手にそっくりだと思った。吊り目で鋭い眼光。身長こそ銀次の方が高いが、似ていると言うよりは、双子か兄弟かと思わせる程の相似だった。