生外(せいがい)
秋の空の下、私はただ虫の声を聞いていた。
「もうこんな季節になるのね」
楽しかったあの頃が懐かしい、、そう思いながら私は今日も憂鬱な1日を過ごす。
大学を卒業してから約7ヶ月経つ。
まだ就職先も決まっておらず、のんびり過ごしていた。趣味と言ってはなんだが私の住んでいるアパートのすぐ側にあるカフェでココアを飲むことが好きだ。いやココアが好きなのではなく金がなくそれしか頼めないのである。
そんな毎日が続く中、時に妙な噂を耳にする。
「あなた知っていますか?」
アパートの大家さんだ。噂話が好きなのか、よく近所の方に話しかける。だがこの話はいつもの様に聞かぬ事は出来ない内容だった。
「隣町にね、変な事件が起きたそうよ。次々と人が居なくなってしまうんですって!人さらいかと思うでしょう。それが警察を呼んだところ全く手掛かりもなく、街の人は口を揃えて、さぁ?心当たりがありませんなと言うんだそうよ。怖いわね。お宅のお子さんも気をつけてくださいね。」
まただ。またこの噂だ。街の人々も学校に行っている子供たちもよくこの話をしている。私はとても興味深かった。元々ミステリー小説は好きだったし、警視庁捜査一課になりたいと思ったこともあった。だから気になってしょうが無かったため電車で隣町に行ってみることにした。案の定、隣町なので金はあまり掛からなかった。