この作品はいかがでしたか?
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コメント
2件
うわぁぁぁぁ!続きあって欲しすぎる、でも多分ないですよね、最高でしたれ
※桃水っぽい水桃です
※死ネタ
僕は大きな神社の生まれで、昔から幽霊とか怪異とか人ならざるものが見えた。
でも、僕はそういう類のものが怖くて仕方なかった。
「ないちゃぁぁぁん……」
だから、ずっと隣の家の一個上のないちゃんに泣きついていた。
「もぉ……w 直接的な害はないんでしょ?怖くないって、ね?」
「怖いものは怖いの!!」
「えぇ……w」
そう笑いながらも、頭を撫でてくれるないちゃん。
この手の感触が大好きだった。
「じゃあさ、いむは俺が死んで、幽霊になってもそんな反応するの?俺は怖い?」
「怖くない!!ないちゃんは怖くない!!!」
ないちゃんが急に変なことを言うので、咄嗟に叫ぶ。
「ていうか、死ぬとか言わないで!ないちゃんまだ13歳でしょ!!」
「あははっ、ごめんごめんw じょーだんw」
ないちゃんの冗談は冗談に聞こえないんだよ……。
「でもさ、俺が怖くないんだったら他の幽霊も怖くないよ。折角視えるんなら、仲良くなればいいじゃん!幽霊視えるとか憧れるし、ロマンありまくりじゃん」
ね?と、泣きそうになっている僕の顔をむぎゅりと包むないちゃん。
「……がんばる……」
この頃から、僕は幽霊とかの類が『嫌い』から『ちょっと苦手』になった。
少しずつ克服しようと、すぐ目を逸らさないようにしたり、話しかけてみたりして、それを逐一ないちゃんに報告していた。
ないちゃんは、成果が表れた時には、すごいじゃーんって撫でてくれて、うまくいかなかった時には頑張ったよ、って抱きしめてくれた。
次第に、僕はないちゃんに好意を持つようになった。
友情じゃなくて、きっと恋情の……好き。
そして、数年経って、ないちゃんの卒業式。
その日に僕はないちゃんに想いを伝えた。
「あの……っ、ないちゃん……。僕、」
「ガチガチじゃんw どーしたの、そんなかしこまって。」
「僕っ、ないちゃんのこと好き、なんだけど……っ」
「んー?俺もいむのこと好きだよ?」
「っそういうのじゃなくて!僕が言ってるのはラブの方なの、」
「……俺もそのつもりって言ったら?」
「だから……っへ!?!?」
あまりにも自然な流れで言うもんだから、理解するまでにラグが発生する。
「俺もいむのこと恋愛的な意味で好きだよ」
「っ、じゃあ……!僕と、そのっ、付き合って、ください……」
こんなときでさえかっこよく言えない自分をヘタレだなぁと自嘲する。
「……はい、喜んで。」
でも、そんなことはないちゃんの笑顔を見たらどうでも良くなった。
やっぱないちゃんイケメンだなぁ……なんて、ないちゃんの顔をまじまじと見つめていたら、不意に唇を奪われた。
「……っ!!?!。!??、??!?」
髪と同じ色の、長い睫毛。
通った鼻。
柔らかい唇。
いい匂いのする髪。
桜と共に春風に攫われてしまいそうな雰囲気を纏ったないちゃんは、唇を離し、ふわりと笑った。
「んは、いむ顔真っ赤。」
心拍数がえげつないことが分かると共に、愛おしさが爆発しそうになる。
「……ないちゃんいけめん……っっっ」
「ははっ、どーもw」
幸せ。幸せすぎる。
ないちゃんが愛おしい。
この幸せがずっと続けばいいのに。
……続けば良かったのに。
__世界は無情だった。神様は意地悪だった。
「ッないちゃん゛!!!いやだぁ゛!!いかないでッ゛!!!」
「危ないですから!!!」
ある日、ないちゃんの家が燃えた。
黒いローブを羽織った死神が、ないちゃんを連れて逝く。
別に家も、ないちゃんも呪われてなかったのに。
なんで、こんな、急に。
なんで……ッ、なんで神様は僕なんかを守護して僕の大切な人の命は奪ってしまうのだ。
神様なんて居ない。神様なんて大っ嫌いだ。
「ないちゃぁ゛ん……ッ!!嫌だ……ッ゛!あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッ」
「おやめ下さい、ほとけ様……!」
その名前で僕を呼ばないで。そんな大層な名前僕にはいらない。
ないちゃんの、あの優しい声で、いむって呼んでほしい。それだけなのに。
もう君の声は聞こえないんだ。
通学路を一人で歩く毎日が、ないちゃんはもう死んでしまったのだという現実を突きつける。
ここ数週間、何に対しても気力が起きない僕は、いつものようにベッドに四肢を放り投げる。
天井を見上げていれば、ふわりとないちゃんが霊になって表れた。
__なんてことは無かった。
というのも、僕はないちゃんを亡くしたあの日から、霊感を完全に無くしていたのだから。
『じゃあさ、いむは俺が死んで、幽霊になってもそんな反応するの?俺は怖い?』
「っあぁ゛ぁ……あぅ、ぅ……」
僕はもう泣きすぎて枯れたと思った涙を流し続けた。
ないちゃんが、幽霊になって、僕の前に現れてくれたのなら、なんて言葉を掛けてくれたのだろうか。
そんな、現実逃避に近い事を考える。
霊感を無くした子なんて、神社の神主として相応しくないし、そんな資格も無い。
それに、ないちゃんが居ないこの世界なんて生きてても意味ないし。
もういっそ、……死んでしまえば。
部屋のドアノブにタオルを掛けて、首を通す。
あは、うまく死ねるかな。
……ごめんね、ないちゃん。