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久しぶりに見るハルは変わり果てていた。

虚ろな目でただ遠くを見つめていた。そんな姿を見て僕は何も言えなくなった。

「ハル…」

京介がその名前を呼ぶとハルの虚ろな目が京介をとらえた。

「…なんだよ」

「散歩でも行かないか?」

「…」

「1度は外に出た方が、」

「黙れ」

「ハル、」

「…出てけ」

「、は」

「出てけっつってんだよ!」

京介は憐れみを込めた表情でハルを見ていた。

それが勘に触れたのか、

「なんだよ!」

そう言ったハルは京介の胸ぐらを掴んだ。

「お前に、何が分かんだよ!」

「…ちがう、俺はただお前を心配して、」

「黙れ!なんなんだよ、余計なお世話だ!」

「だから、友達として、」

「…」

「ハル、」

「お前も、アイツらと同じ顔するんだな」

「…。」

「出てけ、」

そう言ったハルは京介を突き離し後ろを向いた。

「…。」

「……ゆき、行こう」

京介はそう言って部屋から出て行った。僕はハルを見ていた。ハルが振り返る。

ハルのその瞳に僕が映る。

「ゆき…」

ハルは、一瞬だけ縋るような、そんな目をした気がした。

「…早く行け。」

ハルはそう言って布団の中に潜った。



その日はそのまま京介と一緒に帰ったが、僕はあのハルの顔が忘れられなかった。




翌日、僕はまたハルの所へ来ていた。家の前でどうするか迷っていたが、意を決しハルの前へ来た。

「ハル」

ハルが僕を見た。

「また来たのか…」

「今日は1人で来たよ」

「…ふぅん」

ハルは興味無さそうにそう言った。

部屋には沈黙が訪れた。何を話した方がいいのか思いつかない。


「…美月はさ、」

しばらくして、ハルが沈黙を破った。

「…?」

「お前の事が好きだって言ってたんだ」

「…え、」

「俺、その時、美月に無理だろって言った。美月とお前が並ぶのを考えるとモヤモヤした。」

「…?」

「でもさ、一緒に話すお前らを見てみるとあまりにもお似合いで。なんか悔しくなった」

ハルは話を続ける。

「美月は死んだ。だからこんな事言っても意味ないけど、思うんだ。もし、美月が生きてたら、お前と美月は付き合ったりするのかなって」

「僕、…。」

「分かってる。お前がそういう事に疎い事くらい。」

「…?」

ハルはふっと笑た。でも、ハルは僕をすり抜けどこか遠くを見ているようだった。

「…だめだよ」

僕はハルに抱きついた。

「…ゆき、」

手にぎゅっと力を入れる。ハルの体は骨ばっていた。

「俺なんて、死ねば良かったのに。1人だけ生きてのこるくらいなら死んだ方がよかった。」

「…」

「こんな俺の事なんて見捨てろよ、」

僕はハルを離さなかった。

また、部屋には沈黙が訪れた。



「…後悔しても、知らないぞ」


ハルはそう言って僕を離した。と思ったら引き寄せられ、ぐっと顔を近ずけた。

「!?」

心臓がうるさく鳴った。

僕とハルはキスをした。ハルの舌が入ってきて、僕の口内を犯す。

僕ははっと意に返り、両手でハルを突き放した。その衝撃で尻もちをつく。

「…っはぁ…はぁ、」

僕は慌てて息継ぎをした。心臓がバクバクと脈打っていた。

「…。」

そんな僕をハルは無言で見つめていた。ハルの呼吸は少しも乱れていなかった。

「ハルっ、、いやっ、、だ、やめ、」


僕はまた、泣いてしまった。数年前までは同じくらいだった身長も、今ではハルの方がずいぶん高い。ハルは変わった。声も低くなって、肩幅も広くなった。ハルは大人に近ずいていた。でも僕は、、。

どんなに抵抗しても無駄だった。やめてはくれなかった。、、僕は弱かった。


外は暗くなり、厚い雲の下でザーザーと雨が降っていた。

死ぬ前に恋でもしようか

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