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乱闘が終わり、男たちがうめき声を上げながら倒れ伏す中。
6人は、路地の端に腰を下ろして、ようやく一息ついていた。
ひまなつは、いつもより少しだけ真剣な顔でいるまを見つめていた。
「……また拳、血ぃ出てんじゃん」
「ん? ああ、たいしたことねぇ。皮が剥けただけだ」
無造作に言って、いるまは手を振ろうとしたが――その手を、ひまなつが掴んだ。
「……たいしたこと、じゃねぇよ」
「……お前が怪我してねぇか、それだけで十分」
「俺のこと、心配してくれてんのは分かってるけどさ……」
ひまなつは、握った手に指を添えたまま、静かに言葉を続けた。
「俺、おまえが無理してるの見るの、結構キツいんだよ」
「……俺は、守りたいだけだ」
「守るってさ、全部自分で受け止めんのが正解じゃないだろ」
「……」
黙るいるまに、ひまなつはふっと小さく笑って、いるまの拳に自分の頬をすり寄せた。
「痛いのはイヤだけど、お前が傷つくのはもっとイヤ。……そういうの、相棒って言うのか、なんか分かんなくなってきたわ」
「……なつ」
いるまの声が少しだけ震えた。
ひまなつはゆっくり立ち上がって、いるまの肩に背中を預けた。
「今日はさ、甘えていい? おんぶしてくれたら、ちょっとだけ安心するから」
「……いつもだろ」
いつものように背中に乗せながら、いるまは聞こえないように小さく呟いた。
「お前だけは……傷つけたくねぇんだよ」
その言葉に、背中のひまなつの目がほんの少しだけ、潤んでいた。
お互いに名前のつかない感情を抱えながら、
それでもそばにいることだけは、迷いがなかった。