テラーノベル
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警察署の片隅で、ジョセフは新聞を広げ、満足そうに微笑んでいた。
「おれ、良い顔してるよな。」何社もの新聞が署内の机に置かれ、
ジョセフの記事が載っている部分だけが目立っている。
ポテトはそれを見て、呆れたように言った。
「また見てる…。先輩、そんなに自分の記事が好きなんですか?」
ジョセフは新聞を切り抜きながら、鼻を鳴らして答えた。
「ふん、俺の推理力と行動力を称える声を確認しているだけさ。」
ポテトは首をかしげながらも感心した様子で尋ねる。
「でも、先輩。どうしてエイミーの居場所が分かったんですか?」
ジョセフは少し誇らしげに微笑むと、あの日の出来事を思い出した。
ジョセフは管理局を訪れ、受付のノアに声をかけた。「よう、ノア。今日は管理長に用があるんだ。」
ノアは冷たい視線をジョセフに送りながら答えた。「また警察ですか? 管理長は忙しいんですよ。」
ジョセフは軽く肩をすくめ、「自分の娘に容疑が掛かっているのに、
仕事とはずいぶん落ち着いてるねぇ」と皮肉を込めて言った。
ノアはムッとした顔をして反論した。「管理長だって心配してるに決まってるじゃないですか。」
その時、奥から現れた管理長がジョセフに詰め寄った。
「何ですか、エイミーの行方が分かったんですか?」
ジョセフはわざと気を抜いたような調子で答えた。「いやぁ、まだ分からないんだよ。」
管理長は苛立ちを隠せず、声を荒らげた。
「それなら、こんなところに来てないで探してください!」
ジョセフはニヤリと笑いながら言葉を続けた。
「エイミーがいくらタフだって言っても、まだ高校生だ。
そんな子が幼い子供を連れて、いつまでも逃げられると思うか?」
管理長は眉をひそめ、「それがどうしたと言うんだ?」と問い詰めた。
ジョセフは一呼吸置いてから、静かに語りかけた。
「ワトリーはな、エイミーの容疑を晴らすために必死になって犯猫を追い詰めてる。
あのヴィクターに交渉し、不良グループの中だって飛び込んでいった
自分がどうなろうと危険をかえりみずに捜査しているんだぜ」
管理長「ワトリーくんが・・ワトリーくんは無事なのか?」
ジョセフ「・・今は病院にいる」
「なんだって!怪我をしたのか」
「ああ、不良グループにボコボコにされてな、
幸いオレが送ったダークエンジェルが助けてくれたがワトリーはもう・・」
「なんてということだ」
「だがな、ワトリーは見つけたんだ、瀕死の状態でオレに託したんだ」
その言葉に、管理長の表情が一変した。「それは 犯猫を見つけたということなのか?」
ジョセフは口元に笑みを浮かべたまま、嘘をついた。
「そうさ。エイミーはもう逃げなくていいんだ、ワトリーに感謝するんだな」
管理長は目を見開き、驚きと安堵が入り混じった顔で言った。
「本当に…? ワトリーくんがそこまでしてくれたのか。」
「エイミーと警察署に来るんだ、エイミーを保護するとワトリーと
約束した。いいな」
「・・・」
ジョセフが警察署に戻ってしばらくすると、署の入り口に現れたのは
シオンの子供を連れたエイミーと管理長だった。
管理長の表情は少し緊張していたが、エイミーの横に寄り添い、しっかりと歩いていた。
ジョセフはその光景を見て、新聞をテーブルに置きながら呟いた。「やっぱりな。」
彼の計算通りの展開だった。
ポテト「なるほど~、って嘘ついたんですか!」
ジョセフは軽く鼻を鳴らして笑った。「ふっ、結果的には嘘はついていない。」
ポテト「もし、まだ犯猫が見つかってなかったら、どうなってたんですか?」
ジョセフは肩をすくめて言った。「その時はエイミーが捕まるだろうな。」
ポテトは驚きの声を上げた。「捕まるって、先輩ひどいじゃないですか!」
ジョセフは冷静に答える。「あのな、エイミーだって子供つれていつまでも逃げられないだろう。
警察で保護したほうが安全だ。」
ポテトは少し黙ってから言った。「じゃあ、先輩はエイミーが犯猫じゃないって信じてたんですね。」
ジョセフはポテトを一瞥して、余裕のある顔で答えた。「もちろんだ。」
ジョセフは内心でニヤリと笑いながらも、表情を崩さずに思った。
(おれにとってはどちらでも構わなかったんだけどね。)
ジョセフは、手にしたコーラを飲みながら
「ああ、そういえばエイミーが言ってたな。シオンの子供、
ダニエルが『大切なものだ』って言いながらミニカーを見せてくれたってさ。」
隣で書類を整理していたポテトが顔を上げる。
「ああ、そのミニカー、シオンさんがダニエルに贈ったものらしいですね。」
ジョセフは首を横に振りながら少し眉をひそめた。
「いや、それがどうも違う。ダニエル、あのミニカーはサリーにもらったって言ったらしい。」
ポテトの手が止まった。彼の表情には戸惑いが浮かぶ。
「サリーに?じゃあ、サリーは子供の存在を知ってたってことですか?」
ジョセフは重々しく頷き、視線を窓の外に向けた。
「知ってたんだろうな。シオンとサリーは友達だったし、それくらい知っていてもおかしくない。
ただ、アイドルに隠し子がいるなんて話、警察の捜査中に言えるわけがないだろ。」
ポテトは困惑を隠せない様子で言葉を続けた。
「でも、もしその事実をもっと早く知っていたら、ワトリーもあんな目に遭わずに済んだかもしれませんね。」
ジョセフは肩をすくめながら、小さなため息をつく。
「まあな。でも今回はワトリーも大変だったよな。やれやれ。」
そう言うと、デスクの上にあったドーナツを手に取り、一口かじった。
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