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夕暮れのスタジオ。音のない空気が流れる中、初兎は黙ってスマホを見ていた。
返信は、来ない。
“まろちゃん”――Ifに送ったメッセージは未読のまま、いつまで経っても返事はない。
「……また、スルーかな」
そこに現れたのは、りうらだった。初兎の表情を見て、すぐに状況を察する。
「まろ? また冷たくされてる?」
「……冷たいわけじゃないと思う。ただ、忙しいだけで」
「そうやって庇うの、やめたら?」
初兎は言葉に詰まる。
りうらは目を細めながら、初兎の隣に座った。
「初兎ちゃんは、まろにとって何なの? 本気で見てもらえてるの?」
「……わかんない。でも、僕は好きなんだ」
その答えに、りうらの笑顔が少しだけひきつる。
「そっか。じゃあさ――」
スッと、初兎の手を取るりうら。
「もし、俺のことを好きになったらって、考えたことある?」
「りうら……」
「まろが応えてくれないなら、俺が全部あげるよ。初兎ちゃんの欲しいもの、言葉も、気持ちも」
「それは……そんなの、ずるいよ……」
「ずるくてもいいよ。俺、本気だから」
りうらの目はまっすぐだった。でもその奥に、どうしようもない焦りの色があった。
――このままだと、届かないって、分かっているのに。