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「…キツネ?」
例えるなら大きさは柴犬
豊かな麦畑を彷彿とさせる美しい毛並みを持ち首には勾玉を提げている
こんな都会の真ん中で、動物園でもない場所にキツネがいるなんて
そもそも何処から現れたんだ?
「っ!ガクくん!」
ぱあああっと剣持さんが破顔して思いきりキツネに抱きついた
モフモフした毛に顔と体を埋めて、とても気持ち良さそうだ
ちょっと羨ましい
「えーと…剣持さんのお知り合いですか?」
「はい、僕の友達です」
「刀也さん!目が覚めたら一番最初に俺を呼ぶって約束したっスよね!俺待ってたんスよ!あと、この人は?」
キツネにも表情あるんだなとか喋るキツネって何?とか…
思う事は、尽きないが先にインパクトありすぎる出会いをした所為で妙に落ち着いている自分
一生分の不思議を1日で体験してしまうと人間、適応能力がレベルアップするんですかね
「ごめんガクくん、でもこの人が僕を起こしてくれたから僕達また会えたんですよ?」
「えっ」
剣持さんの言葉にガクくんと呼ばれたキツネは、勢いよく私を見る
テーブルの上にいるので自然と見下される形となり、なんだか気まずい
「…そうだったのか、そうとは知らず申し訳ないッス」
「あ、いえ…」
素直に謝罪し頭を下げるキツネ
引いて見たらシュールな図だろうな
「加賀美さん、こっちは友達の伏見ガクくんで…ガクくん、こっちは僕のネジを巻いてくれた新しい主人の加賀美ハヤトさんです」
「よろしくハヤトさん」
「あ、はい。こちらこそ…伏見さん」
こうして成り行きのまま一人と、一体と、一匹の共同生活が始まってしまった。
剣持さんは、その昔
わりと裕福な家に生まれたものの16歳の若さで病に冒され衰弱死
魂がふらふらと彷徨って消滅しかけていた所を不思議な力を持つ伏見さんが人形に魂を移した事で今のような状態になっているらしい
「俺は、生前から刀也さんを守ってきた妖狐とでも言うのかな、魂移す時にデカい力使いすぎて俺との結び付きが強くなったから離れられなくなったんスよ」
「僕のストーカーです」
「おい、助けてやったヤツになんて言い草だよ…」
伏見さんが剣持さんに頭をグリグリと押し付けて、じゃれている
仲良いな、この2人
「そういえば加賀美さんの事も教えて下さいよ」
くすぐったそうに身を捩りながら剣持さんがキラキラした瞳で問うてきた
伏見さんもコクコクと頷いて同意の姿勢
「私は…えー、あった」
口で説明するより手っ取り早いかとスーツのポケットに入れていた名刺を取り出して2人の前に置いた
「こういう者です」
「「加賀美インダストリアル代表取締役……え、社長!?」」
「はい、玩具会社です。私自身の趣味もありますがアイデア探しの為にも剣持さんがいた、あの骨董品店に立ち寄ったんですよ」
レトロゲームとか他にも沢山ありましたしね、と続けるとバッと2人背を向けて何やら内緒話が始まった
『刀也さん、これ玉の輿じゃねぇ?』
『いやいや…美形な上にあの若さで社長なんて、こんな漫画みたいな人、本当に居ます!?脳内設定の可能性とか』
『でも、この家一人で住むにゃ広いし高そうだぜ?あながち嘘じゃねーかもよ』
『確かに色んな意味で優良物件』
いや、どういう意味ですか
つづく
なかなか進まない笑