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ローレン×葛葉 (ローレン視点)
ただの仲良しから恋愛関係へ一歩踏み出したいローレンが、ちょっと勇気を振り絞って(感情制御に失敗して)上手いこといけそうな感じになる話。
「ごめんな…葛葉、やっぱ、好きだわ」
呟くような言葉が聞こえた後、強引に手を引かれ、気づけばローレンに抱きしめられていた―――
アーケードの一角、クレーンゲームやガチャガチャが大量に設置されたゲームエリア内で、ぬいぐるみを取るために手元のボタンを操作している葛葉を、俺は眺めていた。
本日も案件が終わり、お互いに急ぐ用は無いということで、一緒に夕飯を食べた帰り道。
店を出て最寄り駅に向かう道すがら、まだ一緒に居たい…なんて面と向かって言えるわけもなく、丁度目の前にあったゲームエリアで何かしたいと誘ったのだ。
適当に目についたゲームキャラクターのぬいぐるみを取るべく俺から始めたクレーンゲームだったが、続けざまに失敗し、その度に葛葉はゲラゲラ笑いながらバカにしていた。
5回目の失敗の後、さすがに見ていられなくなったのか、クレーンゲームなんて久々だと言いながら、俺をどかして操作し始めた。
これがデートだったら、彼氏ポジは完全に葛葉になってしまうなと思いつつ、そんな事はどうでもいいくらいに好きが増幅して、葛葉の横顔ばかり見つめていた。
(俺が葛葉を好きということ、やましい目で見てしまっていること、全部知ったらどんな顔すんのかな)
「ッあー!クッソもうちょいだった!」
葛葉はこちらを見もしないで、2回目を始めた。
今ので把握しましたからね次であなたの命頂きますよ〜なんて言いながら真面目な顔でやっている。
自分も大概だが、悔しさを隠しもせずにゲームに熱中する姿すら愛しい。
ゲーム友達、仕事仲間という垣根を越えて、好きという感情に気づいたのはいつだっただろうか。
触れたいと思ったのは?
初めて自慰でおかずにしてしまったのは?
「おーしおしおしッ!そのまま〜そぉっとね〜」
取ろうとしているぬいぐるみが、元々は俺が取ろうとしていた物であり、本人は自分だったらすぐに取れると見せつけたいだけなのだろう。
しかしその実、代わりに取ってやろうという葛葉なりの優しさもみえて、自分に対する好感度はそこそこ高いのではないかと自惚れた気持ちももたげる。
今の自分は、告白しようかどうしようかウジウジと迷っている中高生と同じだ。
「よっし取れたぁー!ほい」
誇らしげな顔で取り出したぬいぐるみをこちらへ差し出してくる。
自分の気持ちを伝えて拒否されるくらいなら、男友達の様な関係のままの方がマシなのではと思う。
反面、後でどうなろうと自分の欲望をぶつけてしまいたいとも思う。
今みたいに、葛葉の内包する優しさを自分に向けられた時は、ありがとうの言葉だけじゃなく、抱きしめたい。
好きを押し付けたい。
欲をぶちまけたい。
どうにか男同士の恋愛に引きずり込めないだろうか。
実は人を許しがちな葛葉の優しさにつけ込んで、恋人になってしまえるんじゃないか。
欲望のままに行動するたび許してくれと懇願すれば、恋人としての距離を少しずつ詰めることが出来るんじゃないか。
もう、制御出来無い。
「ごめんな…葛葉、やっぱ、好きだわ」
弱音を漏らすような、情けない声だったと思う。
差し出された手を強引に引っ張り、その手に持つぬいぐるみごと葛葉を抱きしめていた。
「はっ!?ッッッなに!?」
「頼むから、拒否んないで」
抱きしめる腕に力を込め、葛葉の首筋に顔を埋めたまま、俺は懇願した。
腕の中に感じるのは、焦がれ続けた葛葉の身体の感触、温かさ、匂い。
全てが俺に多幸感をもたらしている。
頭の片隅では殴る蹴るで反抗されるかもしれないと思ったが、俺の懇願する声とこのあり得ない状況、人目がある場所ということも踏まえて、その確率はかなり低いと判断した。
結果的に、俺の衝動的な行動はこの逃げられない状況に付け込んだようなものだった。
「〜〜ッ、なぁお前人に見られんだろ、とりあえず離せ」
やはりだ。
最初こそ驚いていた葛葉だったが、現状を客観視して冷静に対処しようとしている。
暴れるなんて出来っこねーよな。
俺は離せという言葉を無視して、もう少し自分の欲に素直になる事にした。
まだ、離したくない。
葛葉に触れている幸せを、もう少し…。
「これ、取ってくれて、ありがと」
片方の腕を腰に回し、お互いの身体でぬいぐるみを抱き潰すように抱きしめ直した。
「〜〜〜ッ!お前ッ…分かったよ!分かったから、外ではヤメロッ!!」
さすがの葛葉も俺の胸を押し返し始める。
体格はどっちもどっちだが、体力は俺の方がある、と自負しているから、このぐらいの反抗なら負けはしないのだが、さすがに引き際だ。
でも、これで終わりにはしたくない。
俺は、葛葉と、好き合って、イチャイチャして、セックスもして、幸せに過ごしたい。
今の反応からして、脈はある。
もう、ウジウジと迷っている俺には戻らない。
「今は離すからさ、この後葛葉の部屋に行かん?」
「はぁっ!?話すならどっか店入ればいいだろ」
「俺の気持ちをくみ取ってほしいんだけど」
「……〜〜〜ッツ!!」
「もっかい言わねーと分からんなら、恥ずかしいけどこのまま言…」
「わーかったよッ!分かったから離せ!」
言質を取ったところで、腕の中の葛葉を解放する。
支えを失ったぬいぐるみが落ちそうになり、とっさに掴み上げた。
「あっぶねー、葛葉が取ってくれたのに、落とすとこだった」
そう言いながら葛葉の顔を見ると、目元から耳にかけてやや赤くなっていた。
葛葉の言葉と雰囲気から感じてはいたが、男に抱きしめられても嫌悪感を抱くより、恥ずかしさが勝っているようだ。
というより、俺だからこそのこの反応なのではないかと思う。
つまり、多分、恐らく、俺は葛葉と男同士の恋愛をする土俵に乗れたんじゃないか?
土俵の外から俺を見ていた葛葉を、引っ張り上げる事が出来たんじゃないか?
「ッはぁ〜〜、もう、行くぞ!」
まだ恥ずかしそうにしながらも、しょうがなく先に歩き始める葛葉の後ろについて行く。
お互い顔は見えない。
電車に乗るまで、いや、葛葉の家に着くまでは見えなくていい。
俺のこの緩んだ顔を、今はまだ見られたくないから。
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございました。
小説を書いたのは学生以来なので、経過した年月を考えると初めてと言っても過言ではありません。
半日仕事です。
考えるうちにリアル時間が経過し、自分の体調や気持ちに左右されるように文章の色合いや雰囲気が変わってしまうことを理解しました。
自分で楽しむために妄想を文章化しているだけなので…あしからず。
もしかしたら続きを書くかもしれません。
全然違うセンシティブを書くかもしれません。
叶さんのくーちゃん呼びもツボなので、そっちにも走るかもしれません…叶さん解像度が上がれば。