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俺たちはダンジョンの入り口で苦戦していた。
ダンジョンの開口部が狭く、身長3メートルで筋肉質の俺が進入できないからだ。
火薬の爆ぜる音。
吹き飛ぶ小石。
モクモクと上がった土煙の中に、お股をポリっと掻くシスターの姿が浮かび上がる。
シスターがダイナマイトを入れる穴をダイナマイトで作ったのだ。
「オマエは何がしたいんだ。大統領を選ぶ人を選ぶ、アレ的なアレか?」
「ダンジョンの穴ボコ爆破すっから、オメエらは下がって鼻ふさいで見てろし」
爆破してから言われても困る。
できれば耳と肛門をふさぎたかった。
さきほどの衝撃で俺の肛門から“シスターのスマホ”が、ビリっと顔を出したような気がするからだ。
シスターが予告もなしに、導火線に火を点けるという原始的な方法でダイナマイトを爆破させたのだ。
遠隔操作で起爆するという考えはないらしい。
「爆破するなら合図をしろ!」
「バイトするなら会津若松?」
シスターが耳に手をあて、振り返る。
コイツも耐性があるのだろう。
肌にはキズひとつ付いていない。
爆風でシャツが開け、片乳が出ているだけだ。
シスターはノーブラのため、モロに出ている。
爆破ポイントから50センチと離れていない場所に俺は居た。
俺の防御力は最強。
ダイナマイトごときで死ぬことはない。
ただ、耳がキーンとして、ちょっと気持ち悪い。
「耳と肛門さまを塞ぐから、爆破はちょっと待て!」
言っているそばから爆発音がする。
だから、合図しろっての……。
先ほどより音が大きい。
飛んでくる岩の破片も大きく、多い。
ふと、魔術師のほうに視線を移してみる。
カラダは無傷のようだ。
髪型は微妙だが。黒々とした髪が逆立っている。
髪が渦をまいて上の方へと向かっているため、太めのドリルの先っちょに見える。
もっと攻めたヘアスタイルを期待していたが、非常に残念だ。
ドリルな髪型で街を歩けば、半笑いの小学生が石を投げつけてくれそうだが。
やめるんだ、半笑いのシスター。
魔術師に石を投げてはイカン……。
「なあ、魔術師。筋肉と魔法でもっと面白い髪型にしろ。それか、左巻きのドリルを右巻きにしろ」
「面白い魔法ならあるかも。ちょっと待って――」
重さ30キロほどのダンベル型スマホを、魔術師がイジリはじめた。
「何を調べているんだ?」
「ボクの使える魔法は数千あってね。呪文をひとつも覚えてないから確認してるんだけど……」
眉間にシワを寄せること十五分。
魔術師が悲しげな表情で俺とシスターを見てくる。
「パスワードわすれた……」
魔術師が言うには、パスワードは五百文字らしい。
「アッシに貸してみ?」
ダイナマイトを仕込んでいたシスターが、涙目の魔術師からスマホを奪取する。
シスターは、スマホを持った手を胸元で組む。
漏らしちゃったかのような恍惚とした表情で何かを唱えた。
何語だか分からない言葉でツラツラとつぶやく。
呪文を詠唱しているようだ。
気を失いそうなほど長い。
「ファフリーズ!」
シスターが凍結したスマホを地面においた。
大魔法が飛び出してきそうだ。期待せずにはいられない。
魔術師のノドがゴクリとなる音が耳に入ってくる。
俺と魔術師が見守るなか、シスターはスニーカーを片方だけ脱いだ。
その場でしゃがみ、振り上げたスニーカーでスマホをブン殴る。
青白い光に包まれたスマホが宙に浮く。
#イケメン
#ファンタジー
すぐさま爆発して、跡形もなく消え去った。
ガクリとヒザをつく魔術師。「バックアップとってないよ」とつぶやく声が、周囲の空気に溶けてゆく。
「ファフリーズって、どんな魔法なんだ?」
「消臭と凍結、芳香剤の散布が一度にできる、極めてハイレベルな破壊魔法だね」
シスターはドヤ顔。
スマホを壊したのはスニーカーだと思うが。
「そんなの、いつ使うんだ?」
「そうだな……。アッシが野原で用を足すときだな。それと、便座を顔に装着した勇者と魔術師のスマホを壊すときだろ。あとは、なんだろうねえ……」
小さくうなりながら、記憶の糸をたぐり寄せている様子のシスター。
閉じていた目をパッと開いた。
「マグロ釣ったときかね。アッシがマグロ漁船に乗ってたときに編み出したワザでね」
「え? 漁船に乗ってたのかい?」
魔術師が興味津々の様子でシスターに顔を向ける。
驚くのはそこじゃないだろ。
シスターは遠まわしに野グ〇をしていると告白したのに。
「蟹工船にも乗ってたな。いろいろやったし。“道端に落ちてるアンジェリカ”と軍手をひっくり返す仕事もしたし。変なクスリ打たれて二週間ねたきりになったときはビビったけどな」
ファッションモデルが道端に落ちていたとは思えない。
打たれた変な薬の効果が、まだシスターに残っているのだろうか。
「もういい。ダンジョンへはまだ入れないのか?」
砕けた岩などで入口がふさがり、来たときより状況が悪化している。アリ一匹入れない状態だ。
「もう1回ぶっとばすから、そこでガタガタ言って待ってろし!」
「今度は合図しろよ」
ああ、わーったよ。シスターは頭上に挙げた手をヒラヒラと振った。
瞬間、暑さを吹き飛ばす爆風が俺のカラダを覆った。
「だから、いきなり発破するなっての。耳がキンキンキーンって、金曜日が週に3回来た感じだわ」
「剣でなぐりあってるみたいでいいだろし!」
「それはそうと、なぜ山が半分なくなっているんだ?」
「魔法でダイナマイト強化したし」
女子プロレスラーのリングネームみたいなことをシスターが言ってくる。
文句でも返してやろうかと思ったが、歩きやすくなってちょうどいい。
おまけに、でかいモンスターが転がっている。
旧支配者のだれかだろう。
ダイナマイトの洗礼を受けて重体らしく、ピクリとも動かない。
「クズ勇者、起きろし!」
ぶっ倒れているモンスターに向かってシスターが話しかける。
それは俺じゃない。
「ねえ、リーダー。いいものを見せてあげるよ」
空気を読めない魔術師が、魔力の溜まった下腹部とタマを撫でながら近づいてくる。
「いいものとはなんだ?」
「魔力汁を抜く必要があるって話したの覚えてる? いま発動できる唯一と言っていい、とっておきの魔法を披露しようと思ってね。ジャンル的には、解放系っていうのかな」
準備はいいかい? 魔術師が俺に笑顔を向ける。
魔術師を罵る用意は、とうの昔にできているが。
知らねえよ!
準備が必要なのはオマエだろ。
俺がそう返答した時だ。
温泉でくつろぐサルっぽい表情の魔術師が、バーベルを空に掲げ咆哮する。
「ファイヤー・ヴォールぅ!」
キ〇タマが虹色の光を放ち、すぐに爆裂。
なにかが吹き飛び、なにかが迸る。
魔術師を中心に火柱が上がった。
「くっせぇ……」
俺とシスターの言葉がハモった。
ホントにくっせぇ。下の毛が燃えたニオイだろうか。
魔法というか、ただの自爆じゃねえか。
ファイヤー・ボールなら、火の玉を前方に飛ばしてほしい。
突然、胸元で手を組んだシスターが、満天の星を見上げて祈りはじめた。
神聖な儀式じゃないぞ、それ。
何も降臨しないよ、たぶん。
いま気づいたが、バーベルの棒が杖だったらしい。
魔術師が言うには、バーベルは親友とのことだ。残念ながらバーベルは真っ二つになっている。
親友は大事にしろよ。
「コイツのタマ、死んだのか?」
最終局面をむかえた線香花火のごとく、赤々と燃える魔術師のタマを見たシスターが、半笑いで俺に問うてくる。
バカは死なないという確信でもあるかのように。
魔術師のタマが鎮火すると、チョコボールのように焦げたタマが揺れていた。
魔術師が1歩踏み出すと、左右の“焦げタマ”がボトリと地面に落下する。
間を置かず、魔術師の股の間から新しいタマが顔を出した。
生物でいうところの脱皮のようだ。
銃で例えるなら、|マガジンの交換だろうか。
タマだけに。
「プロテインの粉と持っていた札束も燃えて、思った以上に火を噴いちゃったわ」
いまだ地面で燻る火の合間から、魔術師の姿が見え隠れする。
魔術師の口調が女子っぽくなったのは気になるところだ。
頼むから内股で歩くのはやめてくれ。
太ももが擦れるシャシュシャシュって音が気になって仕方ない。
バトルの前に魔力を使い切るなよ。
と言いたいところだが、タマと下っ腹がスッキリしている様子から、彼は魔力を全て放出できたらしい。
よかったな。自爆師。
ドリルっぽい髪型は、渦の方向が“左巻き”から“右巻き”に変わり、巻貝のサザエのようになっている。
よかったな。サザエくん。
「あらやだ! アタシったら下に何も穿いてないじゃない!」
内股の魔術師が、オネエっぽく絶叫する。
テカテカしたスキニーパンツの大部分は吹っ飛び、スネ辺りにしか生地が残っていない。
生まれ変わったキ〇タマは、ピンポン球くらいの大きさ。
やや大振りなサオは、風に吹かれて、悲しそうに揺れている。
それにしても、魔術師の声がデカすぎる。
以前から気になっていた魔術師の乳首をまわしてみると、声が小さくなった。
やはり調節用だったらしい。
やるな。乳首師。
「5分くらいしたら元に戻るから安心してねん。筋トレをすれば、魔力はすぐ復活するからねん」
魔力を使い切ると、魔術師は第2形態“オネエ系の筋肉魔女”に進化するようだ。
身長2メートルのマッスル・ウィッチが、内股でモジモジしながら俺の様子を窺ってくる。
背筋に悪寒が走った。当然、俺は目を逸らす。
魔術師が魔女に変身するより困ったことがある。帰りの電車賃が無いのだ。
メンバー全員が無事なのは幸いか。
俺はカラの財布しか持ち歩かない。クレジットカードは釣り堀で紛失。
シスターにいたっては元から無一文だ。
パーティーの財源である魔術師のサイフもスッキリ吹き飛んでしまった。
やっぱり解散するかな。
このお笑いパーティー。