~知ってしまった事実~
朝陽がまぶしい。紅葉と話すためにいつもよりも早く登校してきたからだ。一応、紅葉にはメールで「話したいことがあるから早く学校にきてくれない?」とは送っておいた。ちゃんと来てくれるだろうか?私の心の中に不安がつのる。
教室の前までは来たが、話し声が中から聞こえる。紅葉だろうか?そっと少し扉を開け、教室の中を覗いてみる。
(…..ん?あれは……紅葉。と、もう一人女の子が……)
もう一人の女の子は私のみている場所からは丁度死角になっていて顔が見えない。
(誰だろう…..?でも、紅葉友達いたんだ…..)
なら、邪魔してはいけない。早く立ち去ろうと思ったが、何故か胸騒ぎがした。
(何か嫌な予感がする。もう少し覗いてみよう)
私は昔から勘があたるほうだ。しかもだいたい当たるのは悪い勘だ。
教室から大きな音がした。急いで覗いてみると、机が倒されていた音だった。そして、机と一緒に紅葉も倒れている。
「っ!いい加減にしてよっ!私なんかをいじめて何が楽しいの!?」
いじめ……?今、紅葉はいじめと言ったのだろうか?もしそうだとしたのなら誰に….?
「あんたが悪いんでしょ~?私に逆らうから。素直に従ってれば良かったのよ!」
(これは…..、万里奈さんの声…..?)
昨日あったばかりだが、声がとても印象的だったから覚えている。
(けど、なんで万里奈さんが紅葉を……?)
「っ!あれはっ!どうみてもあんたが悪いでしょっ!私は、正しいっ!」
紅葉が泣きそうな声で叫ぶ。
「あっれ~?そんな事言っちゃっていいのかな~?」
万里奈さんが近くにあった、花瓶を手に取る。
(っ!まさか!?)
私は急いで紅葉を助けに行こうとした。けど、必死に動かそうとしても足が動かなかった。
ガラスの割れる音が教室内に響く。
「っっ~~~~!!!」
それと同時に紅葉の声にならない悲鳴が教室を包む。紅葉の手に飛び散ったガラスの破片が刺さっている。
そのあとも、万里奈さんは紅葉の教科書をビリビリに破いたり、私とおそろいで買ったキーホルダーをハサミでズタズタにきったりと紅葉を傷め続けた。ただ、私はそれををみていることしかできなかった。
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