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〜30日目〜


黒い一面の空間。光が届いていないのだろうか、ただ人の形ははっきりと見える。目の前にいるのは奏と瑞希、横には絵名が。

──今日は分かる。これは夢だと。

隣にいた絵名は私の視線に気が付くと微笑みながら私の左手を取った。私もすかさず握り返す。夢の中だが、この状況下に絵名がいるのは心強かった。

あまりみんなの顔がはっきりと見えない。靄がかかったように、口元から上が黒く霞んでいる。


「──────」


瑞希が何かを伝えているが、私にははっきりと聞こえなかった。二人は口を噤んでいる。二人も同様に聞こえないのか、それとも静かに聞いているだけなのか。


──じゃあね。


しかし、その言葉のみははっきり聞こえて、それを最後に瑞希は歩き出していた。奏も絵名も何も言わない、動かない。ただ、瑞希を見るだけ。私は瑞希を追いかけようとした、が。


「絵名?」


絵名が行こうとする私の手を離さなかった。絵名の顔から靄がなくなっていく、はっきりと見えてくる絵名の顔。


「どうして、追いかけるの?」

「どうしてって……あれ、なんで」


確かに、瑞希がいなくなったところで、私には何も関係はない。追いかけたところで、何かできるわけではないし。


「でも、取り敢えず瑞希を……」


瑞希が歩いて行った方向を向くと、もう姿は見えなくなっていた。そして、いつのまにか奏の姿も消えてなくなっていた。


「っ絵名……!」


振り返る。絵名はいた。しっかり手も握っているし、感触がある。


「私はどこにも行かないよ。その方がいいんでしょ?」

「……絵名」

「少し話でもする?」

「ああ、うん……。そうだね」


何を話そうか。いつもとは雰囲気が違う絵名。そういえば、これは夢だったか──



***



夢と現実の境界。自分がベッドの上にいることがはっきりとしてきた。また、あの夢か。

左手で握っていた感触が消えていく。手が物寂しい。先程まで手を繋いでいたのに、ただただ恋しい。


「やっぱり、何か貰えばよかったかな」


私は左手を握りしめて、布団を強く抱きしめた。

100日後に付き合うまふえな

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