「じゃあな、ローレン」
「おう、また夏休み明けな」
みんな明日から夏休みだという事もあり、浮き足だって帰って行く
それなのに俺はと言うと気分が沈んでいた
だって休み中は先生と会えないから
みんなが玄関に向かう中、俺は保健室へと足を運ぶ
保健室の中に先生は居ない
いつも座っている椅子に白衣とネクタイが掛けられている
「‥‥何してんだ?」
ここに居ないなら‥‥
俺は閉められている小部屋に手を掛ける
クーラーの効いた保健室とは違い、暖かい空気が流れ込んで来た
中には椅子に登り、棚の上に箱を上げている先生がいた
片付けでもしてるんだろう
白いシャツの袖を肘まで捲り、つま先立ちて棚の上を整理している
白衣を脱いだ先生を初めて見る
着たままでも細く感じていたが、ベルトで締められた腰はとても繊細に見えた
そして腕捲りしたその素肌が艶かしく見える
たかが腕が見えているだけなのに
つま先立ちの先生がバランスを崩し体が揺れる
俺は慌てて先生の腰を掴んだ
「っローレン?」
「危ないだろ、気をつけろよ」
「悪い、ありがとう」
棚に掴まりながら降りようとする先生の腰を抱きしめる
「何だよ!暑いだろ‥‥離せよ」
「‥‥‥‥‥‥」
「おい、ローレン?」
俺に掴まれたまま椅子を降り、腕を解こうとする
半分開けられた窓から入ってくる風は夏の暑さを纏い、余計に体を熱くさせた
カーテンが、開けられた窓の内と外を行ったり来たりして、出会った頃を思い出させる
「いい加減に離せよ」
低い声を響かせる
でもどうしても俺は離したくなかった
「‥‥‥‥離しなさい」
「先生‥‥この間1年の子達に好きな人聞かれて、話し濁してたよな。何で?」
「何の事だ?何を言ってる?」
「とぼけてるの?俺はちゃんと聞いたけど」
「いちいち覚えてないよ、そんな事」
「‥‥でもクラスの奴らにも聞いたけど、先生ってなんも教えてくれないって言ってた。なのに俺には色々話してくれたのって‥‥」
「早く帰れよ。みんなもう帰ったぞ」
「それって俺は特別って事?」
「‥‥‥‥そんなことは無い 」
一瞬の間
全てが俺を期待させる
先生を棚に押し付け、逃げ場をなくす
「じゃあ俺を見て『好きじゃない』って言ってよ」
先生が俺を見る
揺れる瞳に俺が映る
「‥‥‥‥好きじゃない訳じゃない」
「それって好きって事?」
「それはっ‥‥」
俺は先生の腕を押さえたまま顔を近づける
先生はフイッと顔を背けた
「なんで?‥‥俺の事好きじゃない?」
「そんな事するなら『好きじゃない』って言うしかなくなる」
「なに難しい事言ってんの‥‥」
「だからやめてくれ」
先生が俺を押し除けようと踠く
俺は先生を離したくなくて更に抑えつける
暑くなる部屋で互いに頰に汗が伝う
「お前は間違ってる」
「だから何が?先生だって俺の事‥‥」
「ちょっ‥‥ローレン!」
揉み合いながら抑えつけていた自分の指をシャツの合間に潜り込ませた
素肌の胸に指が触れる
その腕を先生が掴み俺を見た
「もういい‥‥もう良いよ」
掴まれた腕から力が抜ける
もういいって‥‥
どういう意味なんだよ
俺も好きだから良いよ?
それとも俺の行為に対する諦め?
何でそんな顔するの?
.
コメント
3件
( ◜꒳◝)チヌ… さっきまで寒かったのに一気に体温上がった...