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深淵拘束領域へ落とされる直前、 黒羽刻の魂は、再び白い霧の中へ引き戻された。
裁判長の声が響く。
「――黒羽刻。 二審の請求が認められた。 再審理を行う」
刻は驚いたように目を細めた。
「……俺を、もう一度裁くのか」
検事が淡々と告げる。
「一審の判決は“極めて妥当”と判断されている。 だが―― あなたの魂を知る者が、証人として名乗り出た。 そのため二審が開かれた」
刻は眉をひそめた。
「……俺の魂を知る者? そんな奴、いないはずだ」
裁判長が手を上げる。
「証人、入廷」
法廷の扉がゆっくりと開いた。
白い光の中から、 ひとりの男が姿を現した。
黒羽刻は息を呑む。
「……お前…… まさか……」
証人は静かに微笑んだ。
「久瀬 理御(くぜ りおん)」 黒羽刻の唯一の親友。 生前、刻と同じ裏社会にいた男。
玲央は証言台に立ち、深く頭を下げた。
「裁判長。 俺は……黒羽刻を救いに来ました」
裁判長が問う。
「証人。 あなたは被告の“黒さ”を覆す証言を持つのか」
玲央は静かにうなずいた。
「はい。 刻は……確かに闇にいた。 だが―― あいつは、俺の命を救った。 そして、俺の未来も救った。」
刻は目をそらした。
「……やめろ。 俺はそんな綺麗なもんじゃない」
玲央は首を振る。
「刻。 お前は自分を黒く塗りつぶしすぎてる。 本当のお前は…… “誰かの代わりに傷を背負う男”だった」
検事が反論する。
「しかし被告は、裏社会で多くの者を利用し――」
玲央は遮った。
「利用? 違う。 刻は“俺たちが堕ちないように” 自分だけが汚れ役を引き受けていた。」
裁判長が静かに問う。
「証人。 その証拠はあるのか」
玲央は胸元から一枚の紙を取り出した。
「これは……刻が死ぬ前に俺に残した手紙です」
刻が目を見開く。
「……おい、理御…… それは……」
玲央は読み上げた。
“俺はもう戻れない。 だが、お前だけは光の世界へ行け。 俺が全部背負う。 だから、お前は生きろ。”
法廷が静まり返る。
裁判長は刻に向き直る。
「黒羽刻。 あなたは、自分の魂を犠牲にして他者を守ったのか」
刻は唇を噛んだ。
「……俺は…… ただ……玲央を…… あいつだけは…… 闇に落としたくなかった……」
玲央が叫ぶ。
「刻! お前は黒くなんかない! 俺が証明する!」
裁判長は槌を高く掲げた。
「判決を言い渡す。
一審判決――破棄。 黒羽刻――無罪。 魂は天上界へ送還する。」
刻は呆然とした。
「……俺が……天へ……?」
玲央は笑った。
「当たり前だろ。 お前は俺の親友だ。 光に行く資格がある」
光が刻の身体を包む。
刻は震える声で言った。
「……理御…… お前が……俺を救ったんだな……」
玲央は静かにうなずいた。
「今度は、お前が光の中で休め」
刻は光の中へ歩き出した。
裁判長が最後の槌を打つ。
「――黒羽刻の二審、これにて終結」
法廷には、 親友の絆だけが静かに残った。
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ちぇーん
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