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パフィを失ったツインテイラーは、その場で完全に停止した。頭部にスタークを残して。


「うぅむ。誰でもいいから助けてくれんか」


スタークは周りを見て困った顔で話しかけた。そんなツインテールジジイの上半身を、ツーサイドアップ派達は困った顔で取り囲んでいる。


「どうするよ……」

「どうするったって……」

「捕まえるにしても救助しなきゃできねーぞ?」

「仕方ねぇ。発掘するか」


敵対勢力のリーダーが、無防備な状態で目の前にいるというのに嬉しそうではない。渋々アーマメントを使って、スタークの周囲を削り始めた。


「うわ硬え……何で出来てるんだ?」

「小麦粉だそうだ」

「小麦粉ぉ!?」

「えっ、これ食べれんの?」

「わからん。なにしろ異世界人のやることだからなぁ……」

「じーさんアーマメントつかえねーの?」

「無理だ。いきなり放り込まれて中に詰まってるから、動かせんのだ」

「しかたねーか。助けてやっからジッとしてろよ?」


スタークとツーサイドアップ派が仲良くしゃべっているが、別に珍しい事ではない。そもそも実際に殺し合いをしているわけではないので、争う意味が無い時は普通に手を取り合うのだ。派閥戦争は娯楽なのである。

何も出来ないスタークは、至極真面目な顔でミューゼ達のいる方向を眺めていた。


(もう少しであの乳に届いたのというのに、誠に残念だ……)


ツインテイラーとスターク、戦線離脱リタイア




ウッドゴーレムの頭部付近では、ミューゼ達とケインがにらみ合っている。アリエッタだけは事態が呑み込めず、キョロキョロと周囲を見回している。


「よく見たら全員、素晴らしい衣装だな。俺様もどうにかして着たいものだ」

「……おそらく過去のケインのドルナ。今と全然変わってないわね」

「コイツいつから変態なの……」


露出が少し少ないお陰で、年頃のミューゼとネフテリアでもかろうじて直視できる変態。モッコリが無い事もあって、精神的にだいぶ助かっている。

本物のモッコリがいなくなった事で、エンディアのテンションは下がる……わけでもなく、ギラギラした目で服の間から覗く逞しい腹筋を見つめていた。


「ちょっとミューゼオラさん。出して下さらない? わたくしも加勢しますから」

「違う意味で危険な気配しかしないんで、ダメです」


興奮状態の痴女を放してしまえば、話の流れがどう転ぶか分かったものではない。これ以上の変態は必要無いと、加勢はキッパリと断った。


「じゃあアタシが手伝──」

「よろしくお願いします!」

「ちょっと! わたくしとの温度差!」


ミューゼとしても、変態に対抗する手段は多い方がいい。ただし痴女は除く。


「ちょっとそこの素敵なお方! わたくしを助けてください!」


出してもらえないエンディアは、あろうことかドルナ・ケインに助けを求めた。


「む、お嬢さんお困りか。待っていろ」

「しまった、気を付けて!」


ネフテリアがそのやり取りを見て、真剣に危機感を覚えた。ケインが行動する理由を得てしまったのだ。


「【縛蔦網アイヴィーウェブ】!」


肩から頭の方へ、1歩踏み出そうとしていたケインの体を、細い蔦が絡めとる。


「おおっ、絡まる大胸筋! なんていやらしい!」

「ちょっと黙っててくれリーダー!」


動きを阻害されたケインは少し困った顔をした後、素手で蔦を引きちぎった。


「うわ、流石というかなんというか……」


ネフテリアが呆れながら、アリエッタとムームーを連れて少し離れた。今は空中から成り行きを見守る事にしたようだ。


「助けなくていいんですか?」

「んー、アイツは無害だからね、物理的にはだけど」


ケインはヨークスフィルンの平和を守る警備隊長。人々を守る為に行動するその精神は、紛れもなく善である。そして腕っぷしも相当に強い。ネフテリアから見ても1対1で敵う気がしないのだ。

『これで変態でなければ』と、どれだけの人に思われているのだろうか。老若男女全てを射程圏内に収める、生粋の女装露出魔なのである。その扱い難さは、王妃フレアも触れないようにする程。

そんな物理的には善意あふれる無害な男だが、精神的には誰よりも有害な男のドルナに対処出来るのが、この場ではミューゼとアリエッタしかいない。ネフテリアはそのせいで困っていた。いくらなんでもアリエッタの教育に悪すぎる。海の時みたいに、また心配なのであった。


「アイツをリーダーに近づけなきゃいいよな」

「いいえもっと近づけてください! アレに顔を埋──」

「頼むからもう黙っててくれよ!」


泣き叫びながら、フーリエがエーテルガンを撃った。しかしこのケインはドルナなので、すり抜けてしまう。


「なんだ!?」

「あーはいはい。ちょっとそこのお姉さん。大事な事教えるからこっち来てくださいな」

「くっそ、こっちも異世界人かよ。なんなんだよもう!」

(あ、レジスタンスの存在すっかり忘れてた……)


ケインを撃ちながら渋々ネフテリアに従うフーリエ。ここまで異世界人に手も足も出ていないので、対抗する為に情報収集に回ろうとするのは当然の流れであろう。

フーリエが下がった事で、結局1人でケインに対峙するミューゼ。辛そうに顔をしかめている。


(うぅ……あたし1人でコイツの相手するの? すっごい嫌なんだけど)


今ドルナへの対抗手段を持って戦える存在はミューゼのみ。それは本人も分かっているのだが、やっぱり1人は心細いのだ。

そんな嫌そうなミューゼと向き合っているケインは、少し考えてから行動を起こした。警備隊として困っている人は放っておけない性分である。


「ふんっ」

「くるなぁっ!【縫い蔓ストリングヴァイン】!」


対するミューゼは、なんとか接近を防ごうと、太い蔓を出して横薙ぎに払う。

ケインはジャンプで躱すが、ミューゼはそれを予想し、今度は縦薙ぎに蔓を振るう。

普通であれば避けられないのだが、ケインはエテナ=ネプト人である。空中移動であっさり回避。

そして身体を捻り、ウッドゴーレムの肩へと拳を繰り出した。


バキィッ

「うわっ!」


その威力は生身とは思えない威力で、ウッドゴーレムの腕を丸ごと削ぎ落した。


「うわすっごいパワー……」

「なんだありゃあ……」


ムームーとフーリエが唖然としている。

ケインは体からうっすらと湯気を出しながら、身を起こした。


「っし。キミ達、その女性を解放しなさーい」

「えっ」

「こんな事をして一体何が望みだ?」

「えーっと……」


いきなり穏便な手段に転じ、ミューゼの方が困惑してしまう。


「あいつ、誘拐事件の交渉みたいな事始めたわね……」

「本当に善人なんですね」

「まぁリーダー埋め込んでるから、こっちの方が悪人だよなぁ」


後ろの声も聞こえているミューゼは考えた。そしてエンディアを解放した。


「え?」

「なんで?」

「だってやっぱアイツ怖いもん! 1人で護りながら戦うとか無ー理ー!」

『おおい!』


実はちょっぴり心が折れていたのである。それと言っていないが、先ほど考えたように痴女を解放した事によって危ない事態にはならないという確信も持っていた。


「おお、イイな。うん、とてもイイ」


解放されたエンディアの煽情的な服装を見て、感嘆の声を漏らすケイン。欲情もあるが、何よりもその服を着てみたいという欲望の方が重要な男である。

しかしエンディアの方は、ケインに対する欲情を爆発させて、全力で駆け寄った。


「ありがとうございます! もうレジスタンスとかどうでもいいです!」

「ちょっ!」

「いますぐわたくしをメチャクチャああああああええええええ!?」

「あ……」

「あぁ……」


リーダーとしてあるまじきセリフを吐きながらドルナ・ケインに飛び込んだエンディアは、そのまますり抜けてウッドゴーレムから落ちていった。ケインの立っている場所は壊れた方の端だったのだ。


「えっと、【渦巻木スウァルツリー】……」


流石に転落死されても困ると思い、ミューゼはエンディアの落下地点に渦巻き状の木を生やした。地面には茂みも付けている。


「ほぎゃあ!」


エンディアは生い茂る葉に落ち、幹を転がり落ち、地面の茂みに頭から突っ込み、お尻を突き出して目を回してしまった。

ツーサイドアップ派のリーダー、ここで戦線離脱リタイア


「あの人、今レジスタンスを捨てたね」

「そーですね」

「? はいっ」(よくわからんけど、さっきから寂しいから返事しとこ)

「嘘だろりいいいだああああ!」


残るは目の前で困った顔をしているケイン。目の前に現れるだけで恐怖と子供への悪影響をまき散らすその男は、ミューゼ達にとっては戦う理由が無くてもやっつけたくなる存在。

ドルナを消し去るには、本当に殺すのと同じ事をしなければいけないのだが、少し若いとはいえケインを殺す事が出来るとは思えない。筋力にしろ頑強さにしろ、人としての領域をはるかに凌駕しているのだ。もしこの場にピアーニャがいても、どうにかなるようには思えなかった。


「そんなに凄い人なんですね……」

「たとえそうだとしても、コイツを放置するのは怖いのよね。なによりアリエッタの前に出てこないでほしい」

「ふぇ? なぁに?」(呼んだ?)

「そうですね。立ち向かうしか……ない!【縫い蔓ストリングヴァイン】!」

「せめて目くらましくらいはするわよ。【泡連弾バブルショット】!」

「おっ?」


再度ケインに襲い掛かる蔓。

また避けるかと思って次の魔法の準備をするミューゼだったが、その思惑通りにはいかなかった。

なんとケインは瞬時に蔓に飛び乗り、その上を走りだしたのだ。そのままネフテリアの泡を避け、ミューゼへと接近する。


「このっ」

ブォン

「うおっ!」


ミューゼは蔓を思いっきり振り上げ、ケインを上に飛ばした。そして蔓を消す。


「【花憐剣フラワリングソード】!」


蔓を消したのは次の魔法を撃つ為である。ゴーレムは現在制御していないとはいえ、既に同時に魔法を使っているので、これ以上増やすのは難しいのだ。

ミューゼの杖から複数の花が延び、花びらを高速回転してケインに向かって飛んでいく。この魔法は刃のように鋭く硬い花びらを持つ花を創りだし、回転させながら伸ばす攻撃用の魔法。あまりに早い回転のため、花の周囲に輪が浮かんでいるように見える。その切れ味はかなりのもの。しかしそれだけではない。

空中で軌道を変え、花を避けるケイン。しかし、花も軌道を変え、ケインを追跡する。ミューゼの魔法は蔓などで繋がっている限り、いくらでも操作できるのだ。

落下地点を調整し、元の場所であるウッドゴーレムの肩に戻ってきたケイン。そしてネフテリアが出したままの泡を散らしながら、追いかけてきた花を紙一重で躱した。花はそのままウッドゴーレムに突き刺さる。


「ん?」


ネフテリアが首を傾げた。

ケインは足元に刺さった花を手に取り、興味深そうに観察した。


「こんな花もあるのか……凄いな。ところで、いい加減落ち着いて話でもしないか?」

「やだぁ……」

「そうかー……そろそろ傷ついてもいいか?」


延々と拒絶と攻撃をされ続けるのは、流石にショックらしい。

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