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あれから10日が過ぎ、
俺の思いも虚しく、龍が生まれやがりましたよ。
小さいくせして、鼻の横から左右に髭がにょにょーんと生えている。
――生意気な!
細長い体からは手なのか足なのか分からないものが4本生えている。
今現在は地上1mくらいのところをふよふよ漂っている感じだな。
それでもって俺についてまわるのだが……。 親と思っているのかな?
まさか餌とか思ってないよねぇ。
ホントにやめてよね、悲しいから。
だけど次の行動を見て俺は安心することができた。
ヤツはあの青い鉱石 (アズライト) を旨そうにポリポリ食べているのだ。
おお、おお、結構食うもんだな。喉がつまらないように水ものんどけぇ。
また、散歩の時にでも鉱石を取ってきてやろうかね。
メアリーには昼に連絡を入れておいたから、学校が終わったらこっちに来るだろう。
最近ではメアリーもマリアベルもダンジョンから ”お友達認定” を受けており、念話でお願いすれば簡単に転移できるようになっている。
認定の基準についてはよくわからない。
メアリー・マリアベル・サラ (ダンジョン) の3者は、お菓子作りについてよく話をしているみたいだが……。
そうこうしている内にメアリーが帰ってきた。
タマゴが孵ったことを知ったメアリーは、ただいま大騒ぎである。
いきなりヤツの側に駆け寄り、背中をやさしく撫でている。
「…………?」
あれ、なんでだ?
先ほどは邸 (うち) の馬丁が近づいただけでも『シャー!』と威嚇していたのに。
匂いか? いや魔力かな?
たぶんヤツにはメアリーがわかるんだと思う。
毎日様子を見にきてはタマゴを大事そうに撫でていたからなぁ。
「メアリー、こいつは『龍』だ。青龍というやつだな、体は緑色なんだけど」
「そっか龍だったんだね。かっこいい!」
「せっかくだから名前をつけてあげな」
メアリーはしばらく考えていたが、
「アオチャン。アオチャンにする!」
速攻で決めてしまった。
まあ、ベタな名前ではあるがメアリーが決めたんだし、それでいいとおもう。
「じゃあ、アオよろしくな!」
「…………」
愛想よく言ったつもりだったが、シカトかよ。
「あ――っ! ダメだよゲンパパ。ちゃんと ”アオチャン” って呼ばなきゃ」
メアリーからもダメだしをくらってしまった。
うむ、なるほど。”アオチャン” までが名前なんだな。
「これからもよろしくな。アオチャン」
「キュ――!」
俺が言い直すと青龍はこっちを向いてかわいく答えてくれた。
おお――っ、なかなか賢いじゃないか。
(回想終わり……)
これが青龍の誕生における一連の流れである。
それはいいのだが……。
ただ今、俺とシロは奇怪な出来事に遭遇していた。
………………
それは今朝のことだった。
いつものように早起きした俺は、シロと一緒に散歩に出かけていた。
散々山の中を駆けまわり、帰りにアオチャンへのお土産にとアズライト鉱石を採取していた時のことだ。
鉱石を取り過ぎたせいなのか、はたまた地盤が緩んでいたのかは定かでないが、採取していた岩場が突然崩落してしまったのだ。
蒼い鉱石群の下は大きな空洞ができており、俺は奈落の底へ落ちていく。
「ユリアッ――――――――――――!!」
(とっさに出た言葉です。本編とはなんら関係ありません)
地面が割れて下に落ちていく中、突然のことで対応が取れなかった俺は無意識に『トラベル!』を発動していたようだ。
このとき俺とシロは、ある意味とんでもない所に飛ばされてしまっていた。
「んんっ、いたた……」
少し気を失っていたようだ。
俺は身体を起こし周りを確認する。
ここは何処だ?
目覚めたそこは、こちらの世界 (サーメクス) には珍しく竹の茂った雑木林だった。
周りの地面にはアズライト鉱石が散らばっている。
転移した際、周りの鉱石も一緒に飛ばされたみたいだな。
シロは涼しい顔でお座りして尻尾を振っていた。
――良かった。
とりあえずシロも無事みたいだな。
それでは一旦デレクの屋敷に戻るとしますか。
散らばっていた鉱石を拾い集めインベントリーに収納する。
「シロ帰るよー。おいでー」
側に寄ってきたシロの頭を撫でながら、
――トラベル!
「…………?」
あれっ、何かミスったかなぁ?
それではもう一度、
――トラベル!
「…………?」
ダメだ! 発動しない。(汗)
そのあと何度かトライしてみたがダメだった。
シロの力を借りても……、やはりダメだった。
う~~~ん?
まあ、こうしていても仕方がない。 とりあえず移動してみようか。
雑木林の中を移動しながら他の魔法も確認していく。
スキップ・鑑定・結界など試してみたが、どれも問題なく発動する。
ただ鑑定した時に気づいたのだが、MPの回復速度がかなり遅くなっているようだ。
数値で見てみると、MP回復量はいつもの3割ぐらいかな。
枯渇するまで魔力を使ったら全回復までに3日はかかるだろうか。
………………
草をかき分けながらも進んでいくが、数分もしないうちに雑木林を抜けてしまった。
そして雑木林を抜けた先で、俺たちが目にしたものは、
「…………!?」
とても見慣れた風景だった。(汗)
どこまでも続く家とビル。
よく見るドラッグストアの看板。
道路では自動車が走っている。
(ここって、以前俺が住んでた所の近くだよな)
――何で?
今、俺が立っているのは細い石階段の中腹。
上まであと20~30段ほどあるが、登ってみることにした。
「シロ、行こう!」
石階段を登った先には神社があった。
鳥居があり、左奥に手水舎 (てみずや) がみえる。
右奥には社務所があり、最奥が拝殿と本殿だろうか。
そして鳥居をくぐった先には、高さ2m半ぐらいの茅草で編んだ輪っかが見えている。
夏越しの祓 (なごしのはらえ) の際に作られる ”茅の輪 (ちのわ) ” だな。
なかなか立派な神社だなぁ。 後で拝んどこ。
上まで登りきった俺たちは、そのまま神社に背を向け石階段に腰掛けた。
天気も上々だし、なかなかの景観である。
うぅ――――ん! と両手を上げて伸びをする。
つられるようにシロも前足を出して踏ん張ると、ぐぐーと背中を伸ばしている。
そして立ちあがってのブルブル。
とても気持ち良さそうだ。
さて、これからどうすっかなー?
来れたんだから帰れるとは思うけど、”トラベル” が使えないんじゃなぁ。
隣でお座りして、一緒に景色を眺めいるシロ。
そんなシロをもふりながら途方に暮れていると、後方より誰かが近づいてくる気配がした。
「あの~、すいません」
近づいてきたのは女性のようだ。
俺が振り返ると、
「キャ! 外人さん。……どうしよう。えっと、ハ、ハローぅ?」
年の頃は15歳ぐらいだろうか、巫女服を着た女の子が箒を片手にあたふたしていた。
――なんか可愛いぞ。
「はい、何でしょうか?」
「え、日本語! いえ、あの~。よろしければ、お茶をお出ししますので中へどうぞ」
「お茶ですか? それはありがたい、是非お願いします」
巫女さんについて鳥居をくぐり境内を進んでいく。
せっかくなので、手水舎にて手を洗い口をゆすぐ。
拝殿の賽銭箱の前に進みでた。
あっ、お賽銭!
日本円ではないけれど……。
まぁいいだろうと大銀貨を放り、柏手を打って手を合わせた。
そして後ろにいる巫女さんの方へ向きなおると、
パチパチパチパチパチ! と手をたたいている。
「凄いです。所作が完璧です!」
ハハハッ、巫女さんからお褒めことばを頂きましたよ。