テラーノベル
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愚鈍で低俗、自分の痛みにばかり敏感で貪欲、そんな馬鹿な博徒とは違う。
いつの日か小さな幸せを噛みしめて生きていく。
それが為に皆慣習に懐柔され只黙々と仕事をし、その生を謳歌する。それが「正しさ」だと只盲信していた。
そんな私が数多の歳月を掛け得た金も、近頃流行の投資を始めた数か月後にはグズ同然の株式となっていた。
弱肉強食とは実に言い得て妙である。
現に私はその摂理に従い強者に敗れたのだから。
より経験や知識があるやつの養分になり、それは更に黄魔鬼畜として増長する。
じわじわと迫りくる絶望からか野望半ばにして朽ち果てていくことへの自暴自棄からか、恐らくどちらもなのだろう。
私はそれから逃げていた。
いくらもしない半端物のバーボンや無駄に度数だけ強い酒、慣れない葉巻を手に取る、、凡庸な売人から回されたヒロポン、、、私は寒空に静寂の木霊する万聖節の夜に史上最悪の劣等感に塗れ飛んで行く意識がもう二度と覚め無い様に願うと静かに落ちていった。
私が次に永遠の様な悪夢へ覚めたのは、場所も分からない路地裏の掃き溜めの上だった。持ち物と言えば洋袴の衣嚢に偶然入っていた千円札二枚のみで、二十代後半のいい大人のそれと言うには余りにも心もとない。
財布も携帯も持たぬ儘復路も分からぬ裏路地を進むと時代遅れなネオンサインのBARとしみったれた雀荘だけが寡黙に佇んでいる。
雀荘に吸い込まれる私の斜め後ろから結末はそっと付きまとっていたということはまだ知る由も無かった。
コメント
1件
うわ……重くて美しい文章だね。冒頭の「愚鈍で低俗、自分の痛みにばかり敏感で貪欲」って自己規定からもう引き込まれた。投資に失敗して酒と薬に逃げて、気づいたら路地裏の掃き溜め——って、その転落の描き方が凄く生々しい。特に「史上最悪の劣等感に塗れ飛んで行く意識がもう二度と覚め無い様に願う」って一文、心臓がぎゅっとなった。ラストの「雀荘に吸い込まれる私の斜め後ろから結末はそっと付きまとっていた」で終わるのも、続きが気になりすぎる……。リッツツネさんの文体、好きだなあ。