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焼肉屋のドアを開けた瞬間、むわっとした煙と、懐かしい声が一気に押し寄せてきた。
「うわ、嶋村ちゃん久しぶりー!」
「背伸びた?」
「変わんねぇな、お前」
中学3年生の時のクラス。集まったのは20人くらい。思ったより人がいて、店の一角がまるごと占領されている。
わたしは女子の机に流れるように座った。男子と女子で、なんとなく分かれるのは昔から変わらない。
視線を上げなくても、どこにいるか分かった。
森田くんは、やっぱり中心だった。
笑い声が一番大きくて、身振りも大きくて、相変わらずよくボケて、周りが自然と集まっていく。中学の頃と何も変わってないみたいに、かっこよくて、楽しそうで、眩しい。
――隣の席だった。
中三のとき、席が隣だった。でも、実際に話した記憶はほとんどない。プリントを回すときに「ありがとう」って言われるとか、机を動かすときに軽く目が合うとか、そのくらい。
わたしはただ、前の席や後ろの席の男子と楽しそうに話す森田くんを、横目で眺めていただけだった。笑うたびに肩が揺れるのも、身振り手振りが大きいところも、全部、声をかけられないまま、隣の席から見ていた。
それなのに、その光景だけは、やけに鮮明に残っている。
(……森田くんの笑い方は、あの時から変わっていない)
そう思った途端、女子たちの会話で現実に引き戻される。
「ねえ、小林ちゃんの彼氏ってどんな人?」
「えー!1年も続いてるの!?すごっ」
女子の机は、今の恋の話で盛り上がっている。
わたしは、相槌を打ちながら、ほとんど聞き役だった。彼氏はいない。話せることなんて何もない。
それでも、会話の合間に、何度も視線だけは勝手に森田くんを追ってしまう。
笑ってる顔。誰かの話にちゃんと頷いてる横顔。ふざけてるくせに、さりげなく飲み物を回してるところ。
犬の話をしてたとき、写真を見せながら嬉しそうに笑ってた顔まで、なぜかはっきり思い出した。
忘れたつもりでいたのに。
高校を卒業したら、みんな地元を離れていく。
この同窓会は、その前の、最後の集まり。
もう、会えなくなるかもしれない。
そう思った瞬間、胸の奥がぎゅっと縮んだ。