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思わず言葉を失ったバストロやペトラに代わって言葉を発したのは、この冬篭りで随分話せる様になったギレスラの声である。
『グッ! レイブッゥ! イシビベノブッ! イキテル、トッ、オモウ! アノヒィ、キタ、ニ、ムカッテ、ハシッテイッタァッ! ダカラ、キット、イキテルッ! ナ、ナクナァーッ! レイブゥ~』
「えっ? イシビベノブが! 生きてるかも知れない、そうなの? ギレスラっ!」
『ガッガッ! アノヒ、アイツガ、メズラシク、ハシッテイタァ、ガッ! オレ、フシギニ、オモッテェ、アイツオイカケタァ! アソビノツモリデェ…… ソ、ソレデッェ、……イッピキダケ ……タスカッタァァ グガァ……』
ズザザザアァッー!
鍾乳窟の入り口付近の根雪が一斉に流れ崩れると同時に、大きな金色の虹彩が二つ、煌々(こうこう)とした輝きを放ちながら窟内を見回した後、珍しく内部に入りバストロ達に数歩近付いた場所に腹這いになると話し出す。
『ギレスラ、あの悲しみに溢れた日、アンタの一族、ニーズヘッグの竜達は周囲の魔力が濃密になっている事に気が付いて自ら命を絶つ事を選んだわ…… 竜はね、人間のように石化したり、魔獣みたいに爆砕する事は無いの…… 多すぎる魔力を浴びた時は全身の鱗に向けて余剰な魔力を集中させる、そうする事で『脱皮』を促そうとするのよ、そうすれば皮と共に魔力を体外に出す事が出来る、それだけじゃなく大怪我を負った時の治療効果もあるのよ? 『脱皮』さえすれば全身の欠損部位まで再生されるから、どの竜も本能的にそうしようとするのだけれど…… 魔力災害の場合、『脱皮』が間に合わない、魔力の量と濃さ、体を侵食する速度が速すぎるのね…… 『脱皮』に至らなかった竜は全身を覆った分厚く積層してしまった鱗の内側で暴れまわる魔力に侵され続ける事になる…… そして自身の深部、内臓や頭脳、そんな物よりずっとずっと深い所で自分を自分たらしめていた部分、『魂』が汚されてしまうの…… 自我も無く、冷静な判断力や博愛の精神をも失ってしまった竜、それは既に破壊の権化、『邪竜』、場所も相手も構わずにブレスを吐き続けて悲劇を齎(もたら)す者、世界に生きる全ての命にとっての忌み事、忌まわしき災厄、それに他ならないわ! う、ううぅっ! そうならない様に…… せめて誇り高い竜種として生を全うする為に…… そう考えたアナタの家族は自ら死を選んだのよ! 互いのブレスを浴びせ合い、一緒に滅ぶことでねぇ…… だからね、ねえギレスラっ! アンタ胸を張って言いなさいなっ! グスッ…… 我こそが誇り高きニーズヘッグの最後の仔、ギレスラであるっ、ってねぇ!』
ギレスラは堂々と胸を張って言う。
『ワレコソガ、サイゴ、ノ、ニーズヘッグッ! グガララァーッ!』