「それじゃ準備が終わったらすぐ呼ぶんで!」
案内の村人が立ち去り、俺と女二人が砂浜に取り残される。いやめちゃくちゃ気まず……初対面だぞこっちは。 「あの……」
「う、うっす!なんすか⁉︎あ、じゃなくて何ででしょーか⁉︎」
「い、いえ!こちらこそ急に……」
互いに噛み合わない。
「フィニ殿、私が話を」
もう一人の女がフィニと呼ぶ女の前に出る。
「紹介が遅れてしまった。お嬢の用心棒をしているハベルと申す。以後よろしく」
こいつ……ハベルとか言ったか。二人とも特徴的な服を着ている。系統は似てるけど……色合いも材質も多分違う。
「えっと……俺ジビル!俺もあんたらと一緒で漂流してきたんだ」
「それは心中お察しする。つかぬことを聞くが、出身を聞いてもいいだろうか?」
ぎくっ マズイ。土地の名前なんてなんも知らん!記憶喪失のフリして誤魔化そう。
「えっと……あー……俺、漂流する前の記憶が何というか朧げでさ、覚えてないんだ」
「そうか……いやヴォカでもマタ族でもないとなると……どこの出身かと気になって」
ヴォカ?マタ族?でも族ってことは民族のこと言ってるよな。
「なあ……そのヴォカって奴とさ、マタ族ってのは何なんだ?」
俺の質問に二人は驚く。
「これは相当重度の記憶障害だな……ほんと災難だったな」 なんか知らんがめちゃくちゃ同情された。そんな一般常識的な知識なのか?考え込んでいると、ハベルの後ろにいたフィニが顔を出す。
「私達はヴォカ族なの。ハベルちゃんも私も!」
「ヴォカ族……」
さっきハベルが言ってたやつか。
「えっと……ハベルと……隣の二人はヴォカ族なのか」
さっきハベルが言ってたのに!名前が出てこない!あたふたしているとハベルの隣の女が俺に近づく。 「あ、私はマーキテクチャ・フィニって言います。フィニって呼んでください!」
優しい笑顔で名前を教えてくれる。
「あーそうだ!フィニ!ごめん」
「いやそんな!私名前教えてなかったし……」
そのあと三人でずっと話してた。と言っても俺は二人の話を聞いてただけなんだけど。
「へぇー……旅をしてる最中にここに漂流したってわけか」
「うん……あんまり大きい声では言えないけど、もう一人仲間がこの島にいるはずなの。ここに着いてから少し探したんだけど……見つからなくて」
「あのさ、なんでその仲間がこの島にいるって分かるんだ?」
フィニは少し戸惑いながら周りを見渡す。誰もいないことを確認して服の裾から小さな円形のものを取り出す。
「えっと……これは?」
「受信感知タグだよ。これが赤色に点灯してる時は私達の周囲3km以内にいるって分かるの」
その受信感知タグとやらを見てみると赤色に点灯している。
ガサッ 物音がする。フィニはタグを裾に隠す。
「お待たせしました!準備が出来たんで案内します!」
島の少年に言われ三人で後ろについていく。フィニはなんでタグを隠したんだろう。なんか深刻な顔をしてた。そう思っていたがこれから腹が満たせると思うと多少の違和感は気にならなかった。
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