村への道なき道を進み、森の中にある村へたどり着く。 村へ着くと村人が勢揃いで俺達を出迎える。 「随分と待たせてしまった。我らミカケ島の民が島の荒波に飲まれながらも生き残った旅人達を歓迎しよう」
村長のおっさんが声高々に宣言すると村人達が俺達を宴会場に案内する。村の中心にある他の建物よりも大きいテント状の集会所へ行く。そこには大量のご馳走と器に入った少し白く濁った液体。その液体を指をつけ舐める。これ……
「酒だ!」
「それ、ぜーんぶ飲んじゃっていいからねー」
村のおばちゃんが壺たっぷりに入った酒を持ってくる マジかよ!
「三人とも遠慮はいらないぞ」
村長は笑顔で馳走を俺達三人の前に置く。
「そんじゃ……これ貰うぜ!」
空腹の俺は手当たり次第に食っていく。
「ほっほっ、どんどん食べなされ」
★★★ しばらくして腹がパンパンになるまで飯を食い終える。
「はぁー美味かった」
酒も飲んで非常に気分がいい。ふと横の二人を見る。 全然食べていない。手元にあったちょっとした料理を食べてるだけだ。
「食わないのか?」
「うん、もう……お腹いっぱいみたい」
「そうか、少食なんだな!」
「う、うん!まあね……」
フィニの顔はあまり楽しそうじゃなかった。その隣のハベルもそうだ。
「何だよ、ハベルも食わないのか?」
「腹が空かなくてな。これ以上食べれば楽しい気分が台無しになる」
全く楽しくなさそうな表情でそれを言うか。 まあいいかー……俺は腹一杯飯がくえたんだし。
「さて……夜もふけてきた。そこのもの!旅人を宿へ案内してやりなさい」
村長の一声で俺達は村の端っこにある大きめの家と小屋が一つずつある場所に案内される。どうやら男女で分かれているらしい。
「はぁー食った食った」 俺は小屋の方に案内される。あっちは女だし人数も二人だから妥当なとこだな。
「今日はもう寝よ」
この世界に来て初めて夜を越す。これからどうしようか、どう生きていくか。満腹で眠気が襲う今、そんな不安は頭から抜けていた。人間腹が満たされて安全な場所で寝床があればそんな悩みさえ薄れる。そう自分の身体で感じれた。緊張の糸が切れて俺は泥のように眠りにつく。
……………………ジャリ
んー……あれ?
重い瞼を少し開ける。目を開けた先はさっきまで居た場所とは全く違う場所、言ってしまえば外にいる。綺麗な夜空が木の葉の隙間から見え、うっすら人影が見える。
「あ、起きちまったよ……」
「あ?でももう落とすだけだろ」
男の声……少しずつ闇に目が慣れてくる。周りを見渡すと巨大な穴。穴の先は夜の森より暗い。 落とされる。 本能的にそう感じた。立ち上がろうとした瞬間、足元と腕、胴体が縄で縛られていることに気づく。
「んじゃさっさと落とすぞ。俺眠いんだ」
二人の男が俺を巨大な穴へと落とす。 言葉が出なかった。寝起きで頭が回っていないこともあるが、何より状況を理解できなかった。 どんどんと穴へと吸い込まれていく。身動きの出来ないまま、加速度的に落ちる速度が速まっていく。 ボチャン 水の音。そして背中に激痛。
「ッッ!痛っったぁ!」
水面に思い切り叩きつけられ激痛が走る。そしてゆっくり水の中へ落ちる。 ヤバい……せめて足の縄を引きちぎって…… 息を止めながら足の縄を引きちぎろうと足首に力を入れる。こんなもんで俺を縛れると思うなよ!俺は鉄の足枷を壊したこともあんだ! 十分に溜めを作り、真逆の方向に思い切り引っ張る。 縄は少しずつ伸びていく。そうだ。このまま伸ばしていって…… 呼吸が浅くなっていく。もう時間がない。 縄が緩んでいき、足首がある程度自由に動かせるようになっていく。少しずつ水面へと近づいていく。 呼吸が浅くなっていく。だが水面付近まで辿り着き、水面から顔を出すと同時に息を吸う。その後何度か溺れかけながら水の張っていない場所にたどり着く。幸い月明かりが地面を照らして、かろうじて周りを把握出来る。「……どこだここ?」 声が響く。上にはいくつか穴や裂け目があり、空が見える。ピチャピチャという音も響いてるし、恐らく洞穴ってとこだろ。落ちてた感じ結構深さありそうだし、這い上がるのは難しいだろうな。
「ったくこんなとこ落としやがって……後で覚えてろよ〜」
久しぶりにこんなイタズラされたぜ。でも帝国の奴らには及ばないな。寝てる時に深さが結構ある肥溜めにぶち込まれた時は本当に死ぬかと思ったぜ。
ギィ……ギィ
「ん?何だこの音?」
木の軋むような……いやもっと硬いものが動いてる音。 こっちに近づいてくる。
「今度は何だ?化け物でもいんのか?」
岩の陰に隠れる。正直疲れ果てた体に濡れた身体で戦闘は厳しい。
来る。もうすぐそこにやつがいる。
「……ンー、隠れチゃったカ……」
……!バレてる。俺のことに気がついて……
バコォン!
隠れていた岩が目の前で砕け散る。
目の前に現れたのは鉄の塊。人の言葉を話す鉄の化け物だった。
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