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自由の国でアゲルたち魔物部隊と別れた僕、セーカ、大人カナンさんは、激しい雷雨が降り注ぐ雷龍島の裏手からゆっくりと飛行し、龍族の一味のアジトを探していた。
「全然見つからないわね……奴らのアジト……」
何故だろうか、この世界に来てから、僕の直感というのがすごく敏感に働くようになっている。
「多分なんだけど……地下にあると思うんだ……」
そう溢すと、セーカは首を傾げていた。
雷龍の加護を受けているのは、セーカの血の繋がらない兄であり、研究熱心なドレイクのはずだ。
だとしたら……。
「海岸沿い!?」
僕の閃きに、セーカは大きな声を上げた。
「いやいや、ヤマト! 孤島で狭いとは言え、陸地はこんなに広いのよ? 普通、アジトを作るんだとしたら、もっと内陸に作るでしょ!」
「いや……ドレイクは常に慎重に徹するはずだ……。僕たちからの迎撃にハナから備えて作るとしたら、いつでも海に逃げられるようにすると思うんだ」
それに何より、いくら雷龍の加護で洗脳魔法が強化されているとしても、数多くの魔物を従えられることはできない。
魔物にだって発明の邪魔はされたくないはずだ。
暫く飛行していると、小さな証明と、台形のオブジェクトを発見し、落雷がギリギリ届いていないこともあり、僕たちは一度そこに着陸することにした。
「なんだろう……このオブジェ……。これも龍族の一味が何かしらの目的で作ったのかな……?」
僕たちが眺めていると、次第に台形のオブジェクトは大地からズズズ……と姿を現し、扉が出現した。
「扉……!? 全員、構えて……!」
もう僕たちの居場所がバレたのか……?
と言うことは、ここは隠し通路と言うことか……?
出てくるとしたら、確実に龍族の一味だ……!
そして、ガーッと扉は開かれる。
「あれっ? ヤマトくんじゃない!」
中から出てきたのは
「ルークさん……」
楽園の国で最初に出会し、僕に龍族の存在を教えた最初の龍族の一味 ルークさんだった。
「まさか、避難用の扉を知られてるとは! 流石ヤマトくん! 成長したんだね!」
「い、いや……ここが扉だとは知らなかったです……」
「え、あ、そうなの!? ヤバい……俺、また口走っちゃったね! ま、いいけど!」
そう言うと、徐に下がって行った。
「どうしたの? 潜入しに来たんでしょ?」
そして、誘い込むような笑みで僕らを迎えた。
ルークさんは僕たちと争う気はない……と思いたい。
「みんな……行こう……」
「え!? ヤマト正気!? アイツの罠だよ!?」
ルークさんはニコッと僕たちを眺めている。
「大丈夫。あの人に戦う意志はない……」
そして、僕が先行して扉の中へ入って行った。
「もう! いざとなったらヤマトごと放電してやる!!」
そして、セーカと大人カナンさんも、警戒混じりに扉を潜った。
中に入ると、扉は自動で閉まり、階下へとエレベーターのように下っていった。
ルークさんの企みが分からない……。
でも、見つかった時点で隠密作戦は終了だ。
「ヤマトくん、ヤマトくん」
エレベーターの中で、ルークさんは呼び掛ける。
「今このアジトには、龍長のカエンさん、闇龍の加護を受けたガンマさん、雷龍の加護を受けたドレイクさん、で、君が戦ったヴォルフがいるよ」
「なんでそんなこと……教えるんですか……?」
「さあ、なんでだろうね」
そして、小馬鹿にするような笑みを僕に向けた。
ガタンッ、と小さく揺れると、自動で扉が開く。
「さ、着いたよ」
無防備に背を向けるルークさんに、僕は光剣を静かに突き付け、声を殺しながら囁いた。
「ルークさん……僕たちは今回、龍族の一味と争いに来たわけではありません。カナンを返してください。そうすれば僕たちは争わなくて済む……」
両手を上げることなく、ルークさんは背を向けたまま、僕の言葉に答える。
「脅しかな? ヤマトくん……。そうだな、俺も別に戦闘は望まない。案内してあげようか」
「なんでそんな協力的なんですか……あなたの企みは、一体なんなんですか……?」
すると、僕らの前から一度姿を消し、少し距離を空けた場所でこちらを向き直した。
やはり目で追えない。
瞬間移動みたいだ……。
「これから始まるショーの為だよ! 君たちがあの子を連れ帰ったところで、俺たちには何のデメリットも生じないからね! それに、そのショーが終わってしまえば、本当に君たちは俺たちに対抗する手段は無くなる。だから、今だけは優しくしてあげる。それだけのことだよ」
そう言うと、またニコッと笑みを向けた。
暫くルークさんに着いて行くと、頑丈な扉の前で立ち止まった。
アジトの中は全てが研究施設みたいで、バチバチとした光が所々で光っていた。
「さ、この中にカナンちゃんは閉じ込められている」
閉じ込められている……!!
龍族の一味……!!
憤りを感じるが、何もしてこないルークさんを押し退けて、僕は頑丈な扉をギシギシと開けた。
「え……?」
中はまるで、子供が遊ぶのに申し分のない玩具で溢れており、壁は落書きし放題の優遇室になっていた。
「あ! ヤマトだー!」
そして、カナンも満足気に遊んでいた……。
「ヤマトも食べるー? ケーキもあるよー!」
「あの……ルークさん……。ホントに、龍長とカナンってどんな関係なんですか……?」
あまりの好待遇に、僕は呆気に取られてしまう。
「うーん、それは俺も聞かされてないけど、絶対に怪我をさせるな! 泣かせるな! って言われてたよ!」
本当にもう訳が分からないが、大人カナンさんがあそこまで執拗に『大丈夫』と言っていた意味は分かった。
ここまで安全に保護されているんじゃ、僕たちがどれだけ遅れても、きっとカナンは無事だっただろう。
「さあ、記念すべき再会ですね。言った通り、カナンには特別、素敵な時間を堪能して頂きました」
コツコツと静かに歩いて来たのは、龍長 カエン。
ニコニコと微笑みながら、躊躇なく僕たちに近寄る。
「龍長 カエン……!」
「そんな殺気立たないでください。戦う気はないです」
「なんでこんな簡単に返す……攫った意味はなんだ!」
少し考えると、カエンはルークさんを睨む。
「どうせ、そこのお喋りさんから色々聞いたでしょう。そうですね、貴方達も見学されて行きますか?」
「見学……?」
「ショー……ですよ……」
そう言うと、カエンはコツコツと歩き出した。
ルークさんはわざとしているのか、僕たちの背後に回り、決して逃がさないように背を押してきた。
行くしかない……。
僕が歩き出すと、緊張感溢れる中、セーカと大人カナンさんも僕に続いて歩き始めた。
暫く歩くと、開けた場所に出た。
そこには、ホースで繋がれた虹色に光る円球のエネルギー体と、幾つものPCが並べられていた。
そして 、ドレイクとヴォルフの姿もそこにあった。
「お前! 楽園の国で僕のことをぶん殴った奴だ!」
ヴォルフは、僕に気付くと直ぐに殺気立った。
「こらこら、大切なお客様方ですよ」
パンパンと手を叩き、カエンは仲裁に入る。
「しかし……これから楽しいショーだと言うのに、因縁が残ってしまっては、興醒めしてしまいますね……」
そう言うと、カエンはほくそ笑んだ。
そして、ヴォルフは水魔法 シースルーで、辺り一面に水陣を広げた。
クソッ……! これが狙いだったか……!
「セーカ! カナンさん! 構えてください!」
しかし……
「こんな所で再会できるとは……まあ、来ることは想定していましたけどね、愚妹よ……」
セーカはドレイクに詰め寄られていた。
すぐに逃げておけばよかった……。
仲間の人数差で僕らを上回るつもりだったんだ……!
僕とセーカは、ヴォルフとドレイクと対面し、互い臨戦態勢に入った。