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こうもり@スランプ
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稀灯 夏成🩵🍸
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また、元貴と一緒に過ごせる日が来るなんてまるで夢みたいだった。
悲しい思いをさせていることはわかっていて、それでも側にいようとしてくれる彼を思って、だんだんと自由が利かない体でベッドに横になって、サイズはいつの間に測ったのか、ぴったりの指輪を見ながら元貴と別れてからのことを思い出していた。
元貴と別れて、海外に行くなんて嘘をついてバンドを辞めて···東京を離れて治療してたけど治る見込みは日を追ってなくなっていって。
ひとりで不安と痛みと寂しさと闘っていた。
そんな毎日の中、病院でピアノを弾いたり元貴や若井の活動を追うことだけが僕の気持ちを明るくさせた。
新曲、映画の主題歌や番組出演。
雑誌にラジオ。
最初は見ないほうがいいかとも思ったけど気になるのと何をしてても見かけるのだからいっそ、と開き直って元貴のSNSまでチェックしていた。
そして日記には毎日のことと元貴への想いを綴っていた。
雑誌のこれがかっこいいとか、この演出が好きだとか。
そこに自分が居ないことは寂しいけど、元気そうにしているとわかるだけで安心出来たから。
「ピアノももう、無理かなぁ···」
ボランティアで少しでも聞いてくれる人がいたら、と病院でピアノを弾くこともそろそろ辛くなってきて子供たちを不安にさせちゃいけないって自分で終わりにした。
ピアノも出来ない。
元貴も居ない。
治るために出来ることも手を尽くした。
別れを告げて最後に自分勝手に呼び出したあの夜、別れたくないって僕を求めてくれた元貴は起きたら隣には居なかった。
それで良かったのに、もし隣で眠っていたら僕は皆の協力を無駄にして全部吐き出して怖い、寂しい、一緒にいて、と縋ってしまってたかもしれないから。
それなのに···。
「元貴に会いたい···」
続く苦しい治療、治らない病気に何も出来ない自分。
そんな鬱々としたある日のことだった。
若井から連絡を貰ったのは。
彼からはたまにどうしてる?って連絡を貰ったりグッズを送って貰ったりしていたから特に電話が来ても驚かなかった。
「若井?久しぶりだね、元気?」
「ごめん、ごめん!もう隠しきれなかった!元貴がそっちに行くと思う」
「えっ?!来るって···こんな時間に?!ここに?」
「病院ってことも伝えたから時間とかは考えると思う···けど、もう飛び出して行った」
「···わかった、ありがとう」
若井には本当に酷いことを頼んでしまった。長い間、僕の嘘に付き合って元貴を結果的に騙すことに付き合わせて···だからごめん、なんて必要ないと若井には謝った。
それにあの時の僕は元貴が会い来てくれるのが嬉しかった。
自分から離れたクセに、希望の光のように思えた。
その夜、久しぶりにドキドキして眠れなかった。
まるで遠足の前の日みたいな、クリスマスイブの夜のような、待ち遠しくて嬉しい気持ち。
明日が早く来てほしいって願ったんだ。
翌日、元貴は本当に来てくれた。
毎日のようにテレビやSNSで見ていても、本当の元貴だと思うとやっぱり少し泣きそうになった。
「嫌味くらい言ってやろうかとか、泣いてやろうかとか色々考えてたけど」
「うん、いいよ」
「なんか全部忘れた。会えて嬉しいしかないんだ。大好きなんだよ···」
忘れないでいてくれた。
会いたいと思って、大好きでいてくれた。
一目会えたら笑って死んでいける、なんて思ったほどだったのに、本当に人間は欲深いと思う。
もう一度全て知って戻って来てくれた元貴と生きていたいと思った。
それくらいやっぱり、元貴のことを僕もまだ大好きで···愛していたんだ。
コメント
5件

うあぁ〜泣いた😭😭😭 全編通して勝手に泣いてます😭 こんなに素敵なお話が読めるなんて…! ありがとうございます! 続きも気にしてチラチラ見てます🥹
うぅ🥹