テラーノベル
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翌日。
咲がリビングで勉強していると、玄関から賑やかな声がした。
「ただいまー」
兄の亮が靴を脱ぐ音。続いて悠真の声が重なる。
「お邪魔します」
「おかえりなさい」
顔を上げた咲の視線に、悠真が入ってきた。
一瞬だけ――ほんの一瞬だけ、彼の目が揺れる。
けれどすぐに、いつもの柔らかな表情に戻った。
(……なんだろう。少し違う気がする)
胸の奥に小さなざわめきを覚えながらも、咲は視線をノートに戻した。
けれどページの文字はほとんど頭に入ってこなかった。
亮が「腹減ったー」と呑気に声をあげる。
夕方のリビングはいつも通りのはずなのに、咲には空気がどこか違って感じられた。
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