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【俺はもう、大丈夫だヨ】
Episode.15 悪い日
《🎼🍍side》
気が付けば、季節は秋の中盤。
朝、目が覚める。
まだ少し暗い部屋。
隣には、父さんが寝ている。
俺はゆっくり体を起こす。
まず最初にやることは、決まっている。
父さんの鼻の下に、人差し指を置く。
……。
空気が、当たらない。
一瞬。
心臓が、強く跳ねた。
どくん。
🎼🍍「……っ」
そのあと、ふわっと温かい空気が指に触れる。
……はぁ。
息が漏れた。
🎼🍍「……よかった」
小さく呟く。
もう、いつからだろう。
これを確認するのが、朝の習慣になったのは。
父さんは、まだ寝ている。
顔色、ちょっと悪い。
少しだけ痩せてる。
でも、寝てるだけ。
それだけでいい。
生きてる。
それだけで、いい。
布団から抜け出して、台所に向かう。
朝ごはんを作る。
目玉焼き。
……失敗した。
黄身、ぐちゃってなった。
🎼🍍「……最悪」
別に、大したことじゃない。
でも、なんか、嫌だった。
そのあと。
登校。
ランドセル、やたら重い。
🎼🍍「……だる」
空を見る。
曇り。
どんより。
いつもなら、電線にカラスがいる。
道の塀の上に猫もいる。
でも、今日は何もいない。
静か。
学校。
朝の会。
先生が言う。
「じゃあ宿題出して」
……あ。
忘れた。
机の中。
「なつ」
名前を呼ばれる。
前に出る。
みんなの前。
「どうして出してないんだ?」
🎼🍍「……忘れました」
「最近気が緩んでるぞ」
少し叱られる。
席に戻ると。
🎼📢「なつ、またかよ」
隣でからかうような声。
いるま。
後ろから。
🎼☔️「どんまい、なつくん!」
笑いながら言う、こさめ。
いつもなら。
「うるせー」 って言って、俺も笑う。
でも、 今日は。
笑えなかった。
そのあとも。
ノート忘れてる。
教科書忘れてる。
先生に注意される。
給食。
苦手なものばっかり。
なんなんだよ、今日。
帰り道。
🎼☔️「じゃ、こさ先帰る!」
こさめが走っていく。
🎼📢「俺もバスケあるから」
いるまも手を振って去る。
ひとり。
……。
いつもなら、急いで帰る。
父さん、起きてるかなって。
でも、今日は。
足が重い。
進まない。
空は、相変わらず曇り。
🎼🍍「あー……」
なんか、嫌だ。
*
やっと家に着く。
玄関で靴を脱ぐ。
ランドセルを下ろす。
その瞬間。
思い出した。
🎼🍍「あ」
プリント、 机の中。
🎼🍍「……はぁ?」
水筒も。
学校。
最悪。
🎼🍍「あーもう……!」
なんでだよ。
イライラする。
本当に今日、全部ダメ。
リビングのドアを開ける。
🎼🍵「おかえり、ひまちゃん」
父さんの声。
台所で、夕飯作ってる。
背中が見える。
🎼🍍「……ただいま」
声、低い。
自分でも分かる。
機嫌悪い。
🎼🍵「今日、学校どうだった?」
🎼🍍「……普通」
🎼🍵「そっか」
いつもの会話。
でも、 なんか。
俺だけ、場違いみたい。
そのあと。
ゲームする。
負ける。
また負ける。
🎼🍍「……くそ」
コントローラー握る手、強くなる。
宿題やろうとする。
……プリント。
忘れた。
思い出す。
イライラする。
🎼🍵「ひまちゃん、水筒どこ?」
父さんが聞く。
🎼🍍「……学校」
🎼🍵「忘れたの?」
🎼🍍「……うん」
ぶっきらぼう。
本当に、今日はいい事ない。
🎼🍵「ひまちゃん、ご飯だよ」
いつもの声。
いつもの優しい顔。
俺は頷いて、席に座る。
ご飯。
味噌汁。
魚。
サラダ。
父さんの料理は、美味しい。
誰よりも、 それは知ってる。
でも。
今日は。
……あんまり分からない。
美味しい。
でも、 なんか違う。
気分って、こんなに変わるんだ。
初めて思った。
🎼🍵「……ひまちゃん、あのね」
父さんが言う。
🎼🍍「……なに」
また低い声。
父さんは気にせず続ける。
🎼🍵「ご飯食べ終わったら、少しだけ自転車の練習しよっか」
🎼🍍「……え?」
箸、止まる。
何言ってるんだ。
🎼🍵「ほら、もうすぐ中学生だし」
🎼🍵「中学生は自転車で登校するって話したでしょ?」
🎼🍍「……したけど」
🎼🍵「だから、少し練習しとこうかなって」
父さんは普通に言う。
いつもの顔で。
🎼🍍「いや、待ってよ」
思ったより大きい声が出た。
🎼🍍「俺、運動嫌いだし。自転車も乗れないし」
🎼🍵「分かってるよ、だから──」
🎼🍍「6年生になったらって言ってたじゃん」
その瞬間。
父さんの目が、少し大きくなる。
🎼🍍「なんで今?」
🎼🍍「俺嫌だよ、やりたくない」
🎼🍵「……でも、早く乗れるようにしておいた方がいいと思うよ」
🎼🍍「っ……だから」
🎼🍵「自転車乗れるようになったら、色んな所行けるし」
声。
響いた。
部屋に。
……静かになる。
父さんを見る。
箸、止まってる。
目、開いてる。
驚いた顔。
言葉、出てない。
やばい。
やばい。
やばい。
🎼🍍「……っ、ごめ」
言いかけた。
でもら 言えない。
俺は立ち上がる。
そのまま部屋に走る。
バタン。
扉閉める。
背中つける。
そのまま。
ずるずる。
床にしゃがみ込む。
膝抱える。
🎼🍍「……なんでだよ」
小さく呟く。
父さんは、 病気なのに。
本当は。
俺が、 ちゃんとしなきゃいけないのに。
優しくしなきゃいけないのに。
なのに。
怒鳴った。
最悪だ。
目の奥が、じんわり熱くなる。
でも、 泣かない。
泣いたら。
父さんに聞こえる。
歯を食いしばる。
🎼🍍「……ごめん、父さん」
小さく呟いた声は、
誰にも届かなかった。
next.1000
コメント
3件
🍵くんが🍍ちゃんが6年生になる前に自転車の練習に行きたい理由.....もしかして寿命が関係してるのかな....、? もし、生きてたとしても自分も一緒に練習について行くことできなくなるし、元気に自転車漕いでるところ、見れないからなのかな、 自分で考察してて悲しくなってきた....泣
自分のいいようにいかなかったらつい当たりが強くなるけど、 それを☔️くんや📢くんに向けるんじゃなくて、お父さんである🍵くんに向けるのが、 虚しくはあるけど、1番大切に想ってる人だからなのかなって勝手に思って、泣けてきた😭 続き、楽しみにしてるねん🫶🏻︎💕🙂🎐
何をやっても上手くいかない日ってあるよね…でも🍍くんに関しては、病気のお父さんがいること➕上手くいかない、だから色々な感情がまざって怒鳴っちゃったんだよね… 考えれば考えるほど胸が苦しくなりますぅ😭