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――それは、かつて人間を“食べて”いた鬼たちが暮らしていた場所。
殺意と恐怖と絶望で満ちていた世界。
けれどそこに残った“ひとりの人間”が、
すべてを変えた。
その人間の名前は、
「シンム」
シンムがまず作ったのは、大きな白い塔だった。
その中では、鬼たちが言葉を学び、心を学び、過ちを知るための授業が行われた。
「人間を“食べる”ことは、もう終わった。
これからは共に、生きるんだよ――」
彼の声に、多くの鬼が戸惑った。
けれどその瞳が、まるで太陽のように優しかったから。
恐ろしい鬼たちですら、心を動かされていった。
そして鬼の世界にも“子ども”がいた。
人間を知らない、食べたこともない、純粋な鬼たち。
シンムはその子どもたちに、
「おはよう♪」
「今日も楽しく学ぼうね」
「君の描いた絵、すごくきれいだね^^」
そんなふうに声をかけ、抱きしめて、本を読み、笑ってくれた。
いつしか鬼の子どもたちは、こう呼ぶようになった。
「シンムせんせい!」
塔のまわりには、鬼たちの小さな村ができた。
自分たちで食料を育て、話し合い、助け合う。
もう人間を求めずとも生きていけるように、
シンムはあらゆる知識を残していった。
そして村の広場には、1枚の石碑がある。
「この村は、“人間”がくれた未来から生まれた」
——ありがとう、シンムせんせい
一人で星を見上げるシンム。
「……僕、ほんとはずっと怖かったんだよ」
「でもね、君たちが“ちゃんと変わってくれた”から、今はもう怖くないよ^^」
塔の中から、鬼の子が駆けてくる。
「シンムせんせい! いっしょにお星さま見よ!」
「……うん、行こっか♪」
人間のように暮らす“元鬼”たち
・「おはよう」と言う
・「ありがとう」を覚えた
・大切な人を“守りたい”と思うようになった
・「どうして僕らは人間を食べていたの?」と考えるようになった
かつて恐怖だった鬼は――
今、“ひとりの先生”によって変わった。