テラーノベル
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人間の世界に生まれたはずの人間の双子
人間にも鬼にも捨てられた哀れな子ども
だが――鬼の世界にある
塔の前に倒れていたその人間の双子を見つけたのは、
白いコートに身を包んだ、“ある先生”だった。
「大丈夫……もう、怖くないよ」
「君たちも、この国で生きていいんだよ」
それが、シンムせんせいとの出会いだった。
双子の兄は光幸(こうこう)という名前だった
光幸は、最初からシンムに心を預けていた。
授業も掃除もすべて真面目に取り組み、
いつも塔の廊下で、先生の帰りを待っていた。
でも、それは“依存”に近いほどの感情だった。
「僕、全部シンムせんせいに全部捧げるよ、僕の全て」
「せんせいが笑ってるなら、それでいい……それだけが、生きてる意味だから」
誰かがシンムに抱きつけば、
誰かがシンムに褒められれば、
光幸の笑顔は崩れない。
けれど、目の奥には、冷たい光が灯っていた。
そして
双子の弟は暗不(くらや)という名前だった
暗不は光幸とは違った。
誰も信じず、心を閉ざしていた。
それでもシンムが何度も声をかけてくれて、
やがて少しずつ心がほぐれていった。
「……先生。俺、今日の授業……一番乗りだった」
「だから……今日も、撫でてくれる……?」
拗ねたり、そっぽを向いたり、
でも本当は、誰よりも優しい心を隠していた。
だが彼もまた、“懐いた相手”には命を捧げる忠誠を誓う。
誰かがシンムを傷つけようとすれば――
「触んな、殺すぞ……」
「シンム先生は、“俺の”なんだからな……」
塔の中には、**“双子のための部屋”**がある。
そこにはぬいぐるみ、絵本、勉強道具が並び、
壁にはふたりが描いたシンム先生の絵が貼ってある。
光幸の描いた絵は、
笑顔のシンムが「光に包まれている」。
暗不の描いた絵は、
無表情のシンムが「誰かを守って剣を構えている」。
ふたりは、違うようで同じものを求めていた。
――**シンムという“心の居場所”**を。
ある日、双子が塔の屋上で星を見ていた。
隣には、変わらない優しい笑みの“先生”。
光幸「ねぇ先生。僕、やっとわかった」
「僕が生きてる理由は、“君に認めてもらうため”じゃなくて――
“僕自身が、誰かを守る人になるため”だったんだ」
暗不「俺も……多分な。
“ひとりじゃ生きていけないからこそ”、誰かのそばにいたいって思った」
シンム「……うん^^」
「そうやって、“自分の未来”を見つけてくれたことが、先生は嬉しいよ」
その夜、双子は星空に誓った。
「先生のつくったこの世界、僕たちがずっと守るよ」
「あんたの世界は、もう“俺らの”世界だからな」
その後――数十年ほどたっただろうか、
塔には“守護者”の伝説が残る。
白のローブをまとい、
一人は光のように笑い、
一人は影のように黙して見つめる。
2人はいつまでも、
“先生の教え”を灯していた。
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