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「…………」
なぜ何も言ってくれないんだろう。
拓海くんに話し掛けられると、いつもどおりに笑っている。
その時に気づいた。和美も拓海くんのことが好きだったんじゃないかって……。
本当は、わたしの片思いに協力なんてしたくなかったんだって……。
わたしが拓海くんに告白して失ったのは、恋だけじゃなかった。
大事な友情もなくなってしまった。
拓海くんに好きだって言わなければよかったのかな。
和美にも好きな人がいるって教えなければ、こんなことには……――
考えているうちに、また涙が浮かんできた。でも皆がいる前で泣くのは恥ずかしい。
なんとか耐えて、授業が終わるのを待った。
休憩時間になった時、和美は他の人と楽しそうに話して教室を出ていく。
席に座りながらその光景を見て、流れてきた涙をハンカチで拭く。
「もしかして泣いてます……?」
ズッと鼻をすすっていると、誰かがわたしの席の前に足を止めた。
顔を上げると、見覚えのある人がいた。
この前、わたしに告白してくれた地味な男性だ。
「いえ、大丈夫です」
「そうは見えないですけど」
まだ未練があるのか、ひとりぼっちになったわたしの傍にいてくれる。
教室から他の皆がいなくなっても……。
拓海くんに振られたわたしなんて何の価値もないというのに……。
でもこの人はどうして、あの時……。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を向けたくないけど、気になったことを聞くために地味な男を見上げる。
「なっ、なんですか?」
「わたしのどこを好きになってくれたのか知りたくて……」
「俺、振られてるんですけど」
「教えて……」
「可愛いところですかね」
「それだけ……?」
「はい。一目惚れってやつです。
だけど、話したことがなかったのは、まずかったですよね。
振られたあとに、告白するのが早すぎたなって後悔しました」
わたしは、この人と同じことをしていたんだ。
「似たようなことをして、わたしも振られたからその気持ちが分かる」
「あの……。それを俺に言います?」
「ごめんなさい。
告白された時は混乱して、無理って言っちゃって」
「いや、こちらそ。
自己紹介さえしていなかったなって思いまして。
俺は若山圭翼です」
「圭翼くん……」
目を隠すほど長い前髪が目立つ。
ぱっと見ると暗い印象だけど、肌は綺麗で、顔立ちも整っている。
あいうえお順になっている学籍番号。それが離れていたから、わたしは圭翼くんのことを覚えられなかったんだ。
「永野さんに失恋して諦めていましたけど、まだチャンスがあったりします?」
「えっと……、こっちも失恋したばかりだから。
まだ次の恋とか考えられなくて……。
それに、今のままの自分ではだめな気がする」
和美がいなければ何もできなかった。拓海くんに告白することだって……。
なんでも頼りっぱなしで、自分からは行動できなくて、ひとりぼっちになるのが怖くて……。
そんな自分は、もう嫌だ。
「俺もそう思って反省してました。
だから、まずは自分を磨こうって思って。
色々調べているんですよ」
「どうやるの?
……私も変わりたい。
今よりもっといい自分になりたいから」