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レッスン終わり、珍しく他のメンバーが先に帰った日だった。
楽屋には俺と翔太だけが残っている。
静かな部屋の中、俺はソファに寝転がったままスマホをいじっていた。
「ねむ……」
「寝んなよ、帰るぞ」
「むり、充電切れた」
「人間の?」
「そう」
くだらない返事に、渡辺が小さく笑う。
荷物をまとめ終わっても、佐久間はまだ動かない。
そのままぼんやり天井を見ながら呟く。
「……ねぇ翔太」
「んー?」
「デビューできるかな」
一瞬だけ空気が止まる。
翔太は黙る。
今はまだ未来が遠い。
頑張っても、報われる保証なんてどこにもない。
不安じゃないわけがなかった。
でも翔太は、俺の方を見ると当たり前みたいに言う。
「できるだろ」
「雑!」
「いや、だってお前いるし」
その返事に、俺は目を丸くする。
「なにそれ」
「そのまんま」
翔太は近くまで来ると、ソファの背にもたれた。
距離が近い。
「翔太ってたまにそういうことサラッと言うよね」
「何が」
「ずるい」
「知らね」
そう言いながら、翔太は俺の汗で湿った前髪をぐしゃっと崩す。
俺文句を言おうと顔を上げた瞬間。
軽く唇が触れた。
一瞬だった。
あまりにも自然にされて、俺は数秒固まる。
翔太は何事もなかったみたいに立ち上がる。
「帰るぞ」
「……えっ、ちょ、待って」
「なに」
「いま普通にしたじゃん!」
「誰もいねぇし」
「そういう問題!?」
顔を真っ赤にして騒ぐ俺を見て、翔太は少しだけ笑う。
その笑い方が好きだった。