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俺は珍しく風邪を引いた。
熱なんか滅多に出さないのに、その日は朝から頭がぼんやりして、結局仕事も休むことになった。
昼過ぎまで寝ていたけど、熱は全然下がらない。
スマホを見ると、メンバーのグループLINEが騒がしかった。
深澤から「生きてるー?」って来ていて、阿部ちゃんからは「水分ちゃんと取ってね」と優しいメッセージが届いている。
でも、一番最後に来ていた短い通知に目が止まった。
『あとで行く』
翔太だった。
それだけ。
絵文字も何もない。
なのに、ちょっとだけ熱が下がった気がした。
夕方、本当にインターホンが鳴った。
重たい身体を引きずって玄関を開けると、翔太がコンビニ袋を提げて立っている。
「うわ、顔真っ赤」
「熱あるからね」
「知ってる」
当然みたいに部屋に入ってくる。
コンビニ袋の中にはゼリー、スポドリ、プリン、あと何故かアイスまで入っていた。
「買いすぎじゃない?」
「お前こういう時すぐ飯食わなくなるじゃん」
「……よくご存知で」
「何年一緒にいると思ってんの」
その言葉が、熱のせいかやけに胸に残った。
翔太は慣れた様子で薬と水をテーブルに置いて、勝手にカーテンを少し開ける。
「ちゃんと薬飲んだ?」
「まだ」
「は?」
「だって苦いし」
「子供かよ」
呆れながら薬を押しつけてくる。
俺が嫌そうな顔をすると、翔太はため息をついた。
「ほら、飲め」
「しょうたぁ、のませて?」
「はぁ」
呆れたみたいにため息をつきながら、翔太は俺の顎を軽く掴んだ。
「子供かよ」
「病人には優しくするんじゃなかったの?」
「めんどくせぇ……」
そう言いながらも、ちゃんと袋から粉薬を出して、水まで用意してくれる。
俺がわざと口を開けずに笑っていると、翔太は完全に呆れた顔をした。
「お前さぁ」
「んー?」
「ほんと手かかる」
そのまま親指で唇を軽く押される。
近い、と思った時には、ふっと唇が触れていた。
熱のせいでぼんやりしていた頭が、一瞬で起きる。
「……え」
離れた翔太は何事もなかったみたいに水を差し出した。
「ほら」
「いや今ちゅーしたじゃん!?」
「したけど」
「したけど!?!?」
あまりに普通の顔で言うから、心臓がおかしくなる。
翔太はそんな俺を見て少しだけ笑った。
「薬飲まねぇお前が悪い」
「理不尽すぎる!」
「いいから飲め」
適当に返しながらも、翔太の手はずっと優しかった。
コップを持つ指も、熱を測るために額へ触れる手も、布団を直す動きも。
熱があるだろうか、気持ちがいつもよりたくさん溢れてくる。
「……翔太」
「ん?」
「すき」
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小さく言うと、翔太は少し黙る。
でも口角が上がって満足そうにしてるところ、俺は見逃してない。
それから俺の前髪をくしゃっと触る。
「早く治せよ」
ぶっきらぼうなくせに、声だけ少し甘かった。