アジトでの手当て
「ふわっち、そんなに心配しないでよ…」
潜入任務から帰ってきたばかりのアジト。
静かな部屋に、葛葉と不破湊、2人きり。
帰ってくるなり、不破湊は葛葉の腕を掴んだまま離さなかった。
「ずは、こっち来て。座って」
声は低くて、優しいけど焦っている。
葛葉は言われるままソファへ座り、
不破はすぐに救急キットを持ってきて膝をついた。
「……ふわっち、そんな大げさにしなくても」
「大げさじゃないよ。怪我してる。」
怒ってる風に聞こえるけど、
触れる指先は、驚くほど丁寧だった。
消毒液をつけようとした瞬間、
葛葉が少し肩をすくめる。
「っ……冷た……」
「ごめん。すぐ終わるから、我慢して」
不破は自分の指で、葛葉の手を包み込むように握った。
「ずは……俺がいなかったらどうなってたかわかる?」
「え、でも……ふわっちが助けてくれたから……」
「そう。俺が守った。
ずはを怪我させたくない。絶対に。」
葛葉が目を伏せると、
不破はその頬に触れた。
「ずははさ……もっと自分大事にしろよ。
俺、心臓バクっていってさ……恐かったんだよ」
葛葉は俯きながらぽつりと呟く。
「……ごめんね。
でもふわっちの顔、見た瞬間すごい安心した…」
「当たり前だって。俺、ずはの相棒だから」
眉を下げて優しい笑顔を見た瞬間、
葛葉の目の端に涙が溜まった。
「泣いていいよ」
不破はそっと抱き寄せた。
「ずはは、俺の大事な、大事な……相棒なんだから」
葛葉は不破の胸元に顔をうずめ、
子どもみたいに小さくしがみついた。
落ち着いた後、
不破はふさふさな葛葉の髪に指を通しながら呟いた。
「……なぁ、ずは。
俺以外の誰にも、こんなふうに心配させんなよ?」
「えっ、え?それは……」
「俺、ずはの怪我見たら頭真っ白になって…… 誰にも渡したくなくなった」
その低い声に、葛葉の心臓が跳ねる。
「……ふわっち、顔こわい……」
「怖くねぇよ。普通に本音言ってるだけ」
「…ほんとずるい。」
不破は笑いながら、
葛葉の額に軽く指を当てた。
「ずはが可愛いのが悪い」
葛葉は耳まで真っ赤になり、
また不破の胸にしがみついた。
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