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「俺、恋人が居たんです。引いちゃうかもしれないですけど、結構依存してて僕の存在意義は全てその恋人だったんです。だから、別れた後に自分がどうすればいいのか分からなくて…」
自分が同性愛者でセフレ扱いされていたことには一切触れずに正直な気持ちを伝える。
「そうなんだ…辛かったねって言っても俺には蓮くんの気持ちを理解しきれないだろうけど…でも、」
天海さんはぎこちなく俺を抱きしめてくれた。
人肌に触れたのはいつぶりだっけ?
確か、××が俺のところに来なくなってから、ずっとひとりぼっちで、辛くて…
「蓮くん、今すぐにじゃなくてもいいから少しづつ前を向けるといいね。」
耳元で聞こえる天海さんの声は誰よりも優しく聞こえた。
「あまみさん、は…なんで、そんなに…優しくしてくれるん、ですか?」
「なんで?ん〜何でだろうね…分かんないや」
そう答えて天海さんはぱっと身体を離した。
真っ直ぐ受けられた視線を受け止められず逸らしてしまう。
「あっ!そーだ、いいこと思いついた!」
「いい事?」
「蓮くんの依存先、俺にしてみない?」
「・・・は?」
「出会ったばっかでお互い何も知らない状況だけど、これから知って行けばいいでしょ?この短時間で俺、蓮くんのこと好きになったし!」
「す、き?」
好きってどういう好き?友達とかそういう感じのやつ?それとも…
そんな訳ないと分かっているのに××に重ねて見てしまう自分が心底嫌いだ。
天海さんと××は違う。
分かっていても幸せだった日常が頭の中で再生されて無意識のうちに俺は頷いていた。
「何で優しくしてくれるか、ね…」
泣き疲れたのかあの後すぐに眠ってしまった蓮くんをリビングのソファーに寝かせ、俺は何をするでもなく寝顔を眺めていた。
事前に男だと聞いていなければ見間違うほど蓮くんは可愛らしい顔立ちをしていた。
抱き上げた時の軽さや伸びた髪、ゴミや物が散乱した部屋。
蓮くんを見ると昔の自分を思い出す。
別に嫌な過去とも思ってはいないのだが、周りから見れば俺は異常な環境で生活していたらしい。
「ごめんね、俺は蓮くんが思っているような善人では無いんだよ…」
寝返りを打って顔にかかった髪の毛を軽く払ってやる。
心の奥に潜むどす黒い感情を押し込んで勢いよく立ち上がった。
「おやすみ、蓮くんまた明日」