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四翼がチームに加わって二ヶ月がたった「四翼くん。こっちお願い」
「はーい」
呼ばれた四翼の瞳に赤茶色が写る
クリムゾンのキャプテン・八野勝人(やの まさと)に呼ばれ、勝人の手にグローブをつける
最初は選手にグローブを着けるのもぎこちなかった四翼だが、段々とチームのペースに追い付いてきている
チーム加入が決まった時、同居している兄にこのことを言うか迷っていたが報告すると兄にあっさり送り出され両親には自分が言っておくから任せろと背中を押された
しかし、この日のコート内にはきっかけをくれた二人の姿は別の場所にあった
・・・・・・
修一朗と健吾はプライベートに使っている車椅子のメンテナンスのため、修理業者に来ていた
「うし、これでバランスはok」
「先輩こっちの洗浄は大丈夫です」
薄いグレーの作業着に身を包む従業員で、健吾の幼馴染み、高藤 鈴(たかふじりん)と後輩の白川 拓が車椅子のチェックを終えた
二人が使っているのこの会社は通常の車椅子だけでなく競技用のメンテナンスも行っており、 クリムゾンのスポンサー的存在でもある
「いつもすまねぇな」
健吾が二人に礼をいう
「鈴はほんと作業はえぇよな。トレーナーとしてうちにくりゃあいいのに」
修一朗が移乗しながら皮肉を言った
「行きてぇとこだけどな、今じゃ直すとこは俺が一番の古株だから。こいつのこともまだ心配だし」
言いながら拓の肩を押す鈴に、俺は大丈夫ですと返す拓
微笑ましい二人に修一朗たちは再び礼を言ってその場を去る
椅子を荷台に乗せ一朗の運転で移動する
少し西に傾いた日の光が、修一朗の短いデニムジャケットの上にのる
「あっついな」
健吾が自分の服をパタパタとさせ、助手席に乗る
「お前は黒っぽい服ばっかだからなぁ」
修一朗の揚げ足とりに思わず笑う健吾
「わりぃな。こればっかりは変えれねぇよ」
健吾の薄笑いを見た修一朗は、車を発車させて昼食を買いにスーパーへ向かう
食べるパンをそれぞれ買って、家に保存する弁当を選んでいると修一朗の車椅子がごんっと音をたてる
「あっ、すいませ」
相手の顔をみようと振り返ると、大きな瞳と栗色の髪
「テル!?」
「シュウさん笑」
クリムゾンでは年齢経験ともに一番下にあたるチームのバランスタイプ
九条 輝生(くじょう てるき)のイタズラな笑顔がそこにいた
「お前やめろよ。転けたら起きんのめんどいんだから」
「すんません笑」
修一朗が焦って後ろのハンドルにあった輝生の手をはらうが、笑顔のままの輝生
修一朗が手招きして質問した
「お前も休みか?」
「あい!」
予想していたのとは違う声量に体を反らせる二人
「ここじゃジャマだ、出るぞ」
健吾が間に入ってバッサリ切る
会計を済ませて店を出た後
どうせなら一緒に昼にしようと修一朗と健吾の家に輝生を入れる
「おっじゃましまーす」
陽気な声と共に家のスロープから入る輝生
キッチンに向かうと修一朗はもうテーブルについていて、向かいに座る
「テルはパンあっためるか?」
健吾がレンジの前でトーストを焼きつつきいている
「あっ、俺はいいっす。今日暑いですし」
「了解」
断りつつ買った塩パンを開けてかぶりつく輝生
「お前躊躇しねぇのな」
腕組みしつつトーストがやけるのを待つ修一朗がツッコむ
「はい?おかげさまで」
明らかにはてなマークの浮かぶ顔で修一朗をみる輝生に、呆れたため息をつくと少ししてレンジがトーストの焼き終わりを知らせる
「健吾、例のやつな」
修一朗の呼びかけに健吾はあいあいと返事をしつつトーストを皿に盛り付ける
「どうぞ」
「さんきゅ」
修一朗の前にハムエッグトーストを置き、コーヒーと共に修一朗の隣に座る健吾
「健吾さん、食わないんすか?」
「俺はこれの後だ」
言いながらコーヒーを一口飲む健吾
「てか、今何時だ? 」
「13時28分」
健吾が後ろの時計を確認する
それをきいて三人が同時にハッとした
《や、やべぇ・・・》
゙今日゙の休みがもうすぐ終わるところだった
次の練習は15時からだ
コメント
1件
第3話、めっちゃ良かったです!四翼くんがチームに馴染んできてる感じ、ほんと微笑ましいし成長感じますね✨ 修一朗さんと健吾さんの車椅子メンテのシーンも日常感があって好き。そこに輝生くんが現れて、三人で昼ごはんの流れになるのほっこりした〜!でも最後の「やべぇ…」で時間に気づくところ、思わずニヤッとしちゃいました(笑) 次も楽しみにしてます!応援してますね📣