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2話 心に触れる声
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朝。
布団の中で目は覚めているのに、体が動かない。
昨日の夜のことが、ずっと頭の中にこびりついて離れない。
あの特別教室の前の、黒い霧みたいなもの。
そして、微かに滲んでた灰色の光。
胸の奥が重い。
起き上がろうとしても、身体が鉛みたいに沈んでいく。
本当にあの黒い霧はなんだったんだろ
そんなことをぼんやり考えていたら、
突然、上からすごい重みがのしかかってきた。
「ぐえっ……!?」
「おーい、アキちゃーん!起きろー!」
タカシだ。
思いっきり僕の上に飛び乗ってきて、顔を覗き込んでくる。
金色の光がばらばらと降り注ぐみたいに、眩しく揺れていた。
「……重いってば、タッちゃん..」
「はー?お前がいつまで経っても起きねぇからだろーが!」
タカシは僕の髪をぐしゃぐしゃに撫でてきて、ニヤニヤ笑ってる。
でも、少しだけ心配そうに首を傾げた。
「なんだよ、顔色わりぃな。昨日なんかあった?」
「……別に。なんでもないよ」
「嘘つけっての。お前、嘘つくとき口数少なくなんだよな」
「…てか、タッちゃん、どいて……重い」
「やーだ。元気出るまで降りねぇ!」
タカシは意地悪そうに笑いながら、でもどこか優しい声で言った。
その光は、いつもと同じ、あったかい金色で満ちてる。
(…タッちゃんは、何にも変わらないな)
少しだけ、胸の重みが和らいだ気がした。
「ほら、早く行くぞ。朝メシの時間だぞ!お前の分、俺が全部食っちまうぞー?」
「やだよ。僕が食べるから!」
「おっ、声出たな。いいぞいいぞ!」
タカシが満足げに笑って、僕の上からどいてくれる。
僕はゆっくり起き上がって、寝癖を直しながら、タカシの背中を見た。
キラキラと、部屋いっぱいに金色の光が舞っていた。
(昨日と同じ朝。なのに、同じじゃない。 でも……タッちゃんのおかげで、ちょっとだけ、いつも通りになれた気がする)
朝食の時間は、いつも通り賑やかだった。タカシとリオナはまた何か言い合っている。
「だから俺言っただろ!昨日のドロケーはぜってぇーあのブス女のせいだろ」
「うちのせいにするわけ!?あんたの足が遅いからどっちも捕まって負けたじゃない!うちのせいじゃない!!」
二人の周りで、金色の光と赤黒い光が激しくぶつかり合っている。僕は二人の喧嘩に慣れてしまったけれど、時々、その光のぶつかり合いを見ていると、少しだけ安心出来る。
午前中の聖典の授業中も、僕は昨夜のことが頭から離れなかった。先生の言葉が、右の耳から左の耳へと抜けていく。
(あの黒い光は、本当になんだったんだろう……。)
僕のスケッチブックの隅には、無意識のうちに、複雑な形をした黒い螺旋が描かれていた。我に返って慌てて消しゴムで消そうとしたけれど、鉛筆の跡は薄く残り、まるで僕の心の中に残るしこりのようだった。
午後の自由時間、僕はいつものように部屋でスケッチブックを広げていた。外で遊べとタカシに誘われたけれど、なんだか今日は気分じゃなかったんだ。
「なぁ〜アキちゃん、たまには外行こうぜぇ〜?」
タカシが不満そうに部屋の入り口に立っている。彼の周りの光は、少しだけ拗ねた色に変わっていた。
「ううん、今日は中で絵描いてたいんだ」
僕がそう答えると、タカシは「ふーん」と興味なさそうに鼻を鳴らし、すぐにどこかへ行ってしまった。
一人になった部屋で、僕は昨日描いた絵を見ていた。外で遊ぶみんなの楽しそうな光、そんな中でも1番タカシが輝いてる。そして、一人静かに水をやるリオナの指先から漏れる灰色がかった光。
僕の目に、ふと違和感が走った。リオナが水をやっていた木。その絵の中の木の周りの光が、少しだけ濁っているように見えたんだ。絵に描いた時は、特に何も感じなかったはずなのに。
僕は慌ててスケッチブックを閉じ、部屋を出た。廊下を走り、庭へ向かう。リオナが水をやっていた場所は、施設の端にある、少し古びた木の下だ。
僕は息を切らしながらその木に駆け寄った。そして、目を見開く。
木の下の地面は、薄く灰色に変色していた。そして、その木の幹から枝にかけて、細い糸のような黒い光が、ゆっくりと這い上がっていくのが見えた。それは、昨夜特別教室から漏れ出ていた薄い灰色の光に少しだけど似ていた。
「まさか……」
僕の背中に、冷たい汗が流れた。リオナの指先から漏れるあの薄い灰色の光は、もしかしたら、僕が見るあの黒い霧と同じ、負の光なんだろうか。そして、その光が、この木を枯らしている?とか。
僕は怖くて、その場から動けなかった。その時、背後から声がした。
「ちょっと、あんた。そこで何しているのよ?」
リオナの声だ。振り返ると、リオナは空になったジョウロにさっき水を汲んだかのように濡れたまま持っていた。
リオナは嫌そうな顔で
「邪魔なんだけど?用がないならどっか行っててくれる?」
「え、あ、ご、ごめん」
リオナは不機嫌そうに僕を押し退けて木の麓まで行った時、すぐに立ち止まった。
僕はリオナが何言っていたのかは分からないけど、唯一聞き取れたのは、
『なんで、能力は使ってないはず……』
僕はリオナを後にしてすぐに施設内に戻った。
リオナが言っていた能力って僕と同じ力なのかな……。
そしたらリオナは悪いやつなの?
どっちなんだろう。
そう考えながらも僕はすぐに自分の部屋に戻った。
作者の田中です
長く時間開けてしまいすみません
リアルがとても忙しかったためあまり書く時間が無かったんです(´>∀<`)ゝ
今は落ち着いたのでとりあえず頑張って投稿します。
多少なんかすごく進展していたりする部分もあると思うんですが、そこは申し訳ないです。みんなに読みやすい作品を作れるよう頑張ります(ง •̀_•́)ง