「晴さんのことが」
私がここに来るなんて思っていなかったんだろう。
晴(はる)さんは信じられない、というまなざしで、私を見つめている。
「じ……赤桐(あかぎり)さんは……。プロポーズの報告があるって聞いて……」
思考が追いつかないのか、晴さんは尋ねるというより、疑問をそのまま口にしたような感じだった。
言われて、赤桐くんのことを思い出す。
赤桐くんは……私を「好きだ」と……「結婚したい」と真剣に言ってくれた。
そんな赤桐くんが、私をここへ連れてきてくれて―――。
「あ、赤桐くんは……私を連れてきてくれたんです。プロポーズは……」
言葉を続けようとしたけど、涙で声が喉で 閊(つか)えた。
軽く息を吸った時、エレベーターホールで音がする。
だれかの話し声が近づいてきて、私は慌てて目をこすった。
だめだ。
こんなところで泣いていたら、晴さんに迷惑をかける。
必死で*****
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