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巫女都
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翠
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家の中が、静まり返っていた。
父親は突然入ってきた五人を見ている。
すちは、その間に立ったまま動けない。
すち「……らんらん、帰って」
らん「嫌だ」
すち「お願いだから」
らん「嫌だよ」
らんはすちを見る。
さっきまでふらふらしていたことも。
何度も「はい」と返事をしていたことも。
全部、頭から離れない。
父「お前たちは誰だ」
らん「……すちの友達です」
父「友達なら、勝手に家に入るな」
らん「……すみません」
らんは一度だけ頭を下げる。
けれど、すぐに顔を上げた。
らん「でも、帰れません」
すち「らんらん……」
父「すち。お前が呼んだのか」
すち「違います」
父「なら帰ってもらえ」
すち「……はい」
すちは五人のほうを見る。
すち「みんな、帰って」
こさめ「でも……」
すち「大丈夫だから」
なつ「大丈夫じゃないだろ」
すち「大丈夫だよ」
いるま「お前、それ何回言えば気が済むんだよ」
すちが黙る。
みことが一歩前に出た。
みこと「すっちー」
すち「……なに」
みこと「昨日の夜から、何も食べてないんだよね」
すちの顔が少し強張る。
すち「……」
みこと「今日も、ほとんど食べてない」
すち「……うん」
みこと「それなのに、さっきからずっと動いてる」
すちは目を逸らす。
みこと「それで大丈夫って言われても、俺は信じられない」
すち「……」
父親が口を挟む。
父「体調管理くらい自分でさせればいい」
その言葉に、らんが反応する。
らん「……体調管理って」
らん「今のすちを見て、それ言えるんですか?」
すち「らんらん!」
すちが慌てて止める。
すち「もういいから」
らん「よくない!」
らんの声が響く。
らん「すちが何も言わないからって、何でも言うこと聞くと思わないでください」
すち「……っ」
すちはらんを見る。
怖い。
父親に怒られることも。
この場がどうなることも。
でも、それ以上に。
自分の家のことを知られるのが怖かった。
すち「……お願い」
らんが止まる。
すち「これ以上、言わないで」
らん「……すち」
すち「俺が悪いから」
いるま「またそれかよ」
すち「……え?」
いるま「全部、自分が悪いってことにすんな」
すちは何も言えない。
こさめ「すっちーが悪いとかじゃないよ」
なつ「昨日遅くなったのだって、俺たちと話してたからだし」
すち「……でも」
なつ「それでも、今日ここまでしんどそうになってるのは別だろ」
五人がすちを見る。
誰も帰ろうとしない。
すちは俯く。
すち「……俺、もう慣れてるから」
その一言に。
五人の表情が変わった。
らん「……慣れてる?」
すち「うん」
らん「何に?」
すちは答えない。
らん「こうやって、体調悪くても動くこと?」
すち「……」
らん「怒られないようにすること?」
すち「……」
らん「何を言われても『はい』って言うこと?」
すちの手が小さく震える。
すち「……そういうの、全部」
静かな声だった。
らんは何も言えなくなる。
みことがすちの隣に立つ。
みこと「……今日は、もう何もしなくていいよ」
すち「でも……」
みこと「少なくとも、俺たちがいる間は」
すちはみことを見る。
そして。
初めて、少しだけ困ったように笑った。
すち「……みんな、ほんと変なの」
こさめ「すっちーに言われたくないよ」
なつ「それな」
いるま「……まあ、今さらだろ」
らんも少しだけ笑う。
けれど。
父親は何も言わず、五人を見ていた。
このまま終わるとは、誰も思っていなかった。
コメント
1件
読み終わりました…。すちの「慣れてるから」って言葉がすごく刺さりました。あれまで全部一人で抱えてきたんだなって思うと胸が痛い。でも五人が誰一人帰らなかったのが本当に救いで、「みんな変なの」って笑ったすちの顔が一番印象に残ってます。父親の沈黙も気になる…続きが気になるな。お疲れさまです、碧さん。