通電祭

海

​──果て　だよ

──みんながいきたいところなんだって

──ぼくは知らない

──海って？

──あわを　泡をね

──思いどおりに吐けるようになったの

──すごいって褒めて

──くるしいの？

──無理に真似しなくってもいいんだよ

──あ

──仲間じゃないんだ

──どうりでやたら光ってるんだ

──ふうん

──よくわかんないや

──元気なあいだに戻りなよ

──じゃ

──ぼくは泳ぐから

蝶

──だあれ？

──羽も触覚も盗まれたのかしら

──何にも付いていないじゃない

──蜜が吸えないんでしょう

──なら邪魔よ　どいて

──使い物にならないんだから

──なあに？

──要らない

──欲しくないわ

──花が

──健やかに揺れていてくれさえすれば

──かまわない

──他のものは知らなくたっていい

──なんだか不思議

──あなた　爽やかね

──刺激がなくてまろやかね

──吸われて喜ぶなんて

──おめでたい子

──嫌いじゃない

──けど　飛べないなら

──無能なことに変わりはないのよ

風

──ああ　疲れた

──暫く休もう

──優しいってなんだ

──好きで吹いてないもん

──ほんとのほんとは

──ほんとに留まっていたいんだ

──覚えていてほしいのに

──忘れられる

──らくなんだよね

──従えば済むし

──諦めればこわくない

──面倒だろうし

──覚えられて望まれるほうもね

──でも　なんだか

──気持ち悪いよ

──残しといてほしかったよ

──欠片くらいさ

──置きざりならよかった

──自由のことは

──飽きちゃわないから

──好きってほどじゃないもん

──おまえ　純粋だなあ

──巡り回るだけだよ

──流れのままに

星

──平気？

──ええ　果てにようこそ

──なんだかきみって

──とても清らかですね

──場違いなほど

──他のは汚れて褪せているのに

──まだ使い古されていませんね

──逃げてきたんですか？

──元のところに戻りますか？

──はあ

──もったいない

──まあ　どちらでもかまいませんが

──では一つひとつ片づけて整えますね

──あら？

──楽しかったって？

──よかったです

──いろいろな色で満たされていて

──かれらを素敵に仕立てた証拠ですね

──きみの一部に

──わたしも

──なるのでしょうか

──いやではありませんよ

──なんだか不思議で

──転がされているような

──恐ろしいのかもしれません

──・・・

──ありがとう

──では　さようなら