俺は初めて馬に乗った。親切な方なんだろうけど、どうにも気に食わなかった。
馬に乗っている間、ソイツは何かしらふんふんと、唱えているようだった。
いや、歌を歌っているのか、…?
「そちら、名はあるのかい」
「……」
「何のならば、わたくしが付けて差し上げましょう」
何かを閃いたように、またもや手を二回叩いた。その音がとてもうるさい。
「あなたの名は、” 実る “ にしよう。素敵な名前でしょう。」
この人から、まともな案が出てくるとは思えなかった。でも、実際出てきたのはとても普通な名前だった
その人は黙々と、名の理由を教えてくれた。
「素敵な出会いが芽生え、あなたの希望が ” 実る “ ように。そう願ってあります。どうか、素敵な一日を」
まだ決まってすらいないのに、もう決まったみたいな雰囲気を出していた。本当に腹が立つ人だと思った
「ミノルは聞いたことがありますか」
「……」
「十二束三伏というものを。いづれも素敵なものなのです」
ただの弓だってのに、こんなにも夢中になって語っている彼の顔をもっとみたいと思ってしまった
「ミノル、よかったらわたくしの事は、新之丞と言ってくださいな。これも何かの縁です仲良くしましょう」
「……どうせこれも夢なのですから。あははと、笑ってください」
チラッと見えた、彼の横顔はとても悲しそうな顔をしていた。
細目で目あいてんのか分からないけど、悲しい顔は、はっきりと分かった。
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