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これは、イギリスのとある小さな街に生まれた一人の少女の物語。

少女の名前はヘルマン・グレイ・アリス。アリスは平凡な家に生まれ、何不自由なく生きてきた。街では人気者で、街の子達とはとても仲良しで恋人もいた。優しい両親と町の人々に恵まれ毎日が充実していた。

そんなある日。突如としてその平和な日々は音を立てながら崩れていった。

目を覚ますと体が、いや…そもそも自分自身が他の何者かに変わってしまっていた。両親から受け継いだ茶色い髪と黒い瞳は金色になり、身長も大きくなっていた。

アリスは慌てて両親に相談し、近くの協会へと向かった。そこで衝撃的な事実を告げられる。

「その娘は、悪魔の子だ」

神父から告げされたその言葉に、協会にいた老人達や両親が凍りつく。両親の中で信じられないという感情が頭を埋め尽くした。

両親は必死に何かの間違いだと、神父に言ったが神父はもう一度両親にこの子は悪魔の子だ、と容赦なく告げた。

家に帰ったはいいものの、両親は魂が抜けたあとの抜け殻のようになってしまった。アリスはいつものように話しかけるも両親は冷たく突き放した。

そこからが悪夢の始まりだった。またたく間に噂は広がっていき、先日まで仲が良かった街の子達も豹変し、アリスに冷たい言葉や石をぶつけた。

アリスは唯一信じられる恋人に助けを求めたが、その助けを呼ぶ声すら届かなかった。恋人はアリスを見捨てたのだ。

アリスは深い絶望の底へ突き落とされた。ただ髪色と目の色が変わっただけなのに、なぜこんなにも酷い仕打ちを受けなければならないのだ。なぜこんなにも大好きだった人達から怪訝に扱われなければいけないのだ。

そんな思いは日に日にアリスの心の中へと積もっていく。いつしか、その思いは人間への憎しみへと変わり始める。

しかし、唯一の救いもあった。それは街の小さなケーキ屋さんだった。店を営む夫婦だけはアリスの事を守っていた。例え、両親が夕食を作ってくれなくたとしてもその夫婦の元へ行けばまるで自分たちの子供のように可愛がってくれるのだ。温かいご飯も、美味しいケーキも、温かい愛情も全てくれる。

しかし、アリスの中にいる悪魔はアリスを蝕んでいく。いつの日からか人間の食べ物が食べられなくなったのだ。食べても味がせず、時には喉を通らないほど不味く感じてしまう。

そんな中、唯一美味いと感じれたのは「血」だった。アリスはその事実に気づいたときに思わず口に出して言った。

「まるで、吸血鬼みたいだ。」

そう、アリスは密かに知っていた。この世界に本来は存在しない架空の生物、「吸血鬼」というものがいる事を。どこから知ったのかわからない。しかしなぜか知っているのだ。自分も同類になってしまったからなのだろうとアリスは思い込む。


そして、長い年月が過ぎ、アリスは10歳になった。その頃には体はほぼ成人並に大きくなっていた。

そして、アリスは決意した。もう、帰る場所なんてどこにも無い、愛した街は消え去った。ならば…こんな街なんぞ燃やしてしまおう、と。

決意した瞬間からアリスは動き出した。貯めていた金をかき集め、唯一自分を愛してくれた夫婦のもとを訪ね、二人にここじゃなく他の場所に移住したらどうだ?と提案し、夫婦はロンドンから離れた場所に移住することにした。

こうなればもう、何も気にする必要はない。

既にこの街は「化物の晩餐」と成り果てたのだ。

化物は息を潜めて夜を待つ。クスクスと笑いをこらえながらじっと夜になるのを待ち望む。

そして、あたりが闇に包まれ赤い月が黒い雲から顔を出した頃。悪夢が始まる。

化物は静かに部屋を出て、1階へと降りていく。化物の一番目の前菜は両親だ。

両親はそんな異変に気づかずに寝室で体を重ねていた。母親の甘い喘ぎ声とベッドが軋む音が静かに響く。そんな中、ぎぃっと音を立てて寝室に化物が足を踏み入れる。

「あっ♡そこっ♡そこよぉっ♡私っ♡もうだめぇっ♡」

「俺ももうっ♡我慢ができなっ」

二人が絶頂に達する直前に男の首がボフンッとベッドの上に落ちる。

「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」

先程まで火照っていた女の顔が男の生首を見た途端に青ざめていく。そんなことを気にせずに化物は首のない男の体を退けて女の前に迫る。そして、化物は優しい微笑みを見せながら女にこう言った。

「お母さん、大好きだよ。」

その瞬間、ゆっくりと女の首はズレていき、ボフンッと男と同じようにベッドの上に落ちる。化物は…いや、アリスはその落ちた生首を抱き抱え、ギュッと抱きしめる。

そして、二人を骨まで食らい尽くした。バキッボキッと鈍い音をさせながら噛み砕きすべてを味わい尽くした。

「っ…はは、はっはは!!あっははははは!!!」

普通に考えて、人肉をたべるなんて反吐が出るような物だが今は違う。思わず笑ってしまうほどに美味いのだ。今まで食べてきた物たちよりも美味しい、もっと、もっと食べたい。そんな衝動が大きくなっていく。アリスは歩き出した。この街にいる者たちを食らい尽くすために。

アリスは丁寧に1軒ずつまわった。寝ている者がいれば丁寧に起こして目の前でゆっくりと味わいながら食べていく。たとえ悲鳴や命乞いをしてもお構いなしに食べていく。

気づけば街にいるすべての人間を食べ終えていた。赤子も、まだ腹の中にいた赤子も、犬も猫も、大人も子供も。すべてを食らい尽くした。

そして街に火を放った。普通ならばあまり燃えないが今日に限っては風も強く空気も乾燥していたためよく燃えた。次から次へと建物に火が移り、気づけばその街全体が燃えて火の海となっていた。

「あぁあ、燃えちゃった。燃えちゃった!」

アリスは楽しそうに火の海となった街を見ながらそう叫んだ。狂ったようにひとしきりに笑ったあと、不意に元の意識が戻ってきた。

「…ぇ…?あれ…、私…何をして…」

いきなり戻ってきたためか、理解に時間がかかったが直ぐに理解する事になる。鼻の奥や口から匂う鉄の香りに目の前に見える火の海。その全てがアリスを理解させた。

「な、なんで燃え…て…、あれ…なんで…」

色々なものが焼き焦げる匂いがアリスに先程まで自分がやってきたことを思い出させる。

「う…嘘、だ…。そ、そんなのって……、ッ…お”ッ…ゴハッ…」

そんな現実が信じれなかったのか、思わず吐いてしまう。胃からの吐しゃ物は、黄色く薄い幕に覆われて未消化のままの形で出てきた。中には赤子の頭蓋骨らしきものも混じっていた。その吐瀉物をを見てしまいさらに自分がやった事を自覚していく。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ…」

その場でしゃがんで耳を塞ぎながら誰かに向かって謝りだす。しかし、いくら謝ったとてそこには誰もいない。

そんな中、遠くからサイレンが聞こえた。誰かが火の海と化した街を見つけて通報したのだろう。ここにいては自分がやったとバレてしまうと思い、罪の意識に囚われ震える足を動かして、人を超えた尋常じゃないスピードでその場を去る。

この国にいてはいつかは見つかる。目撃者がいたのなら指名手配される。そう考えたアリスは海を渡った。

走るのではなく、「羽」を出して。

その羽はとても綺麗なものだった。翼膜の全てが真紅に染まっており所々に薔薇の模様があった。その羽は月明かりに照らされ赤い光を反射する。

その羽を広げながらローマの小さな孤児院まで飛んでいった。

これからのアリスの運命はどうなるのか。


続く。

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👏👏👏 続きが楽しみです✨💓

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