「ふわっち、へばるの早ーい。」
縁側に座り、お茶を飲みながら不破を煽るのは葉加瀬冬雪。
葉加瀬の目の前には汗だくな不破が腕立て伏せをしている。
腕立て伏せといっても普通の腕立て伏せではなかった。
逆立ちをしながらの腕立て伏せだった。
不破の顔は血が上り真っ赤になっていた。
「冬雪ー。そんなに煽ると不破さんが可哀相だよ~。」
葉加瀬の煽りに便乗するのは夜見れな。
半分が黒、半分が白の髪色でツインテールをしている派手な少女。
夜見もお茶を飲みながら不破を見ている。
不破を見ながら笑っている二人。
すると、不破が背中から倒れた。
「あ、倒れた。」
「不破さーん。大丈夫ですかー?」
二人は、不破を心配しているようだが一向に立ち上がろうとしない。
そんな二人の後ろから誰か歩いてきた。
「葉加瀬さん、夜見さん。不破さんの様子はどうです…か?」
歩いてきたのは加賀美ハヤトだった。
加賀美は顔を真っ赤にして倒れている不破を見て固まった。
「あれ…生きてるから大丈夫ですよ…ね?」
加賀美は不破を指差す。
「大丈夫でしょ。ふわっちー起きてー!」
葉加瀬は不破のもとに駆け寄る。
不破の頬を数回叩く。
「んぁ!はっ、ここは?」
目を覚ました不破は遠くを見つめている。
「ボケてないで修業再開しなよ。」
葉加瀬は不破にチョップをあたえる。
不破は「えー。」とぼやきながらも腕立て伏せを再開した。
その隣で葉加瀬は応援を始めた。
不破と葉加瀬を見ながら夜見が笑った。
「…加賀美くん。もう弟子は取らないんじゃなかったっけ。」
夜見が加賀美の方を見る。
加賀美は苦笑を零す。
「黛さんからのお願いなんで断りきれなかったんですよ。」
加賀美から黛に頼み事をすることは多々あった。
しかし、黛からの頼み事はされたことがほぼない。
なので貴重な黛の頼みなので断れなかったのだ。
「不破さんは、これからの修業に耐えられるかなぁ。」
夜見が不破を見る。
不破が加賀美の屋敷に来て3か月経つ。
3か月間ずっと不破は腕立て伏せ、腹筋、ランニングなどの筋トレしかしていない。
木刀すら持たず、筋トレばかりだ。
剣士になるための剣術は一切教えてもらえていない。
今までの弟子達はそれに我慢が出来ずやめていく者が多かった。
「さあ?やめたいならやめてもらって私は構わないので。」
加賀美はそういうと部屋に戻ろうときびすを返す。
「あ、加賀美くーん。お腹空いたなぁ。」
夜見の言葉に加賀美は振り返る。
「先程、団子を頂いたので持ってきます。葉加瀬さんと不破さんにも伝えてください。おやつの時間だと。」
加賀美はそういうと再び廊下を歩き始めた。
「はーい。」
夜見は加賀美に手を振る。
そして、葉加瀬と不破に声をかける。
「おーい。お二人さーん、加賀美くんがお団子持ってきてくれるってー。」
夜見の言葉に葉加瀬と不破の目が輝く。
葉加瀬が喜びながら夜見のもとへ走る。
不破も腕立て伏せをやめて縁側の方へ走る。
「ふわっちまだ体力残ってるじゃん。」
葉加瀬が笑う。
「団子は別の体力なんで。」
不破がキメ顔で答える。
「そんな別腹みたいな感じで言えるものなんですか。」
加賀美が二人の会話に入る。
両手には大きなおぼん。
おぼんの上には、三色団子やみたらし団子などたくさんの団子とお茶が乗っていた。
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