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【第92話 戦いの後……。】
ルシファーとの死闘を終えた匠と華奈は、極度の緊張から解放され、フィルモア城で数日間眠り続ける。目を覚ました二人は、互いの無事を喜び合い、華奈を長年苦しめていた契約魔法の呪印が消えていることにも気づく。死を経たことで契約が失われ、華奈はようやく自由を取り戻したのだった。
匠は華奈を魔人族領へ招き、華奈はその前にメアリーにも会いたいと笑顔を見せる。だが、ようやく訪れた穏やかな時間は長く続かなかった。フィルモア王国では次代の国王を巡る話が進み、ウィラードが有力な王位候補として祭り上げられていたのだ。しかもパパ・ヤーガをはじめ、多くの者がその即位を支持している。
ウィラードが即位すれば、メアリーは必然的に女王候補となる。急展開に混乱したメアリーは2人の元を訪れる。
匠と華奈は呆れながらも「観念しなさい」と背中を押す。長き戦いを終えた仲間たちは、それぞれ新たな責任と未来へ向かい始める――。戦いの終わりと、新たな時代の始まりを描くエピローグ。
※※※※※
【第93話 戻った日常。】
ルシファーとの戦いを終えたフィルモア王国では、正式に国王へ即位したウィラードが、新たな改革に着手していた。先王ミラードの時代に腐敗した貴族社会を立て直すため、悪魔アビルゲイの能力によって貴族たちの忠誠と本心を見極め、虚偽や私利私欲を抱く者たちから爵位を剥奪していく。
その中には、メアリーの父であるスペンス辺境伯もいた。しかし、息子エドワードは父と異なり、魔人族との共存と新たな交易による王国の発展を願っていた。ウィラードは彼に領地を託し、世代交代による改革を進めていく。さらに剣聖クローソーも伯爵領を任され、民のために剣を振るうことを誓うのだった。
一方、匠と華奈は魔王城を訪れ、魔王レオンやシェラと再会する。華奈を未来の妻と紹介する匠だったが、シェラはその関係に複雑な思いを抱く。そしてレオンは、かつてルシファーを打ち破った華奈の真の実力を確かめるため、巨大なスケルトン・リーパを召喚する。
戦いを終えた世界で、新たな王国と新たな関係が動き始めていた――。
※※※※※
【第94話 魔王レオンと匠。】
魔王レオンは、神格の力に完全に目覚めた華奈の真の実力を確かめるため、巨大なスケルトン・リーパーを召喚する。しかし華奈は剣すら抜かず、神速の動きで背後に回り込み、たった一撃の手刀で相手を撃破してしまう。その実力はレベル985。一方、神レベルへ到達している匠はレベル1001だった。
もはや世界でも屈指の強さを持つ二人だが、レオンが恐れていたのは彼らの力ではなく、国家間の均衡だった。フィルモア王国から剣聖が去ったことで、魔人族との軍事的な均衡も保たれると判断したレオンは、二人を自由の身とする。そして匠に、自分たちの好きな人生を歩むよう告げるのだった。
魔王城を後にした匠と華奈は、争いの火種となることを避けるため、フィルモアでも魔人族領でもない港町バースで暮らすことを決める。
その途中、匠はこれまで支えてくれたシェラと別れを交わす。華奈との関係を気遣いながらも、シェラへの感謝を伝える匠。最後には互いの思いを胸に抱えながら、匠と華奈は手を繋いで魔人族領を去っていく。
長い人質生活と戦いの日々を終え、二人はようやく、自分たち自身の人生を歩き始める――。
※※※※※
【第95話 受け継がれる平和。】
数年後、匠と華奈は港町バースで結婚生活を送り、共同開発した魔導保冷庫「魔冷」の大ヒットにより、水産業から設備事業へも進出していた。華奈は子を身ごもり、二人は穏やかな家庭を築いていく。一方、メアリーもラインハルトと結ばれ、二人の子供に恵まれ、かつて「魔眼娘」と呼ばれた少女は優しい母親として幸せな日々を送っていた。
さらに十数年後、匠と華奈の子・麗羅と玲恩が成長。圧倒的な実力を持つ麗羅は、来年のフィルモア王立貴族学校への入学を前に、特命大使となった華奈と共にフィルモアへ移ることに。脳筋な性格まで母譲りの麗羅と、それを支える弟・玲恩に、匠は今日も頭を抱えるのだった。
※※※※※
【第96話 新入生。】
十数年後、匠と華奈の娘・麗羅は、フィルモア王立貴族学校へ入学するため王都バキ・ラカンを訪れる。親の力を借りず一般入試で合格した麗羅は、黒髪の美少女として注目を集めるが、その正体は王子エリオットを何度も打ち負かしてきた「姫剣士」だった。再会早々、エリオットと口喧嘩を始めたことで正体が露見し、学園でもまた華奈によく似た騒がしい日々が始まろうとしていた。
一方、王となったウィラードの信頼を受け、匠は王命によって表に出せない犯罪者を処罰する「左翼近衛騎士団――レフティーガード」の一員として暗躍していた。今回の標的は、違法な奴隷取引に関わった貴族と商人たち。匠は初めて実戦任務に同行した息子・玲恩に、力だけではなく、世の中に存在する残酷な現実と正義のあり方を教える。
禁術による絶対服従契約と性搾取の被害を目の当たりにした玲恩は、犯罪者への怒りを募らせる。だが匠は、正義を貫くためには感情だけで剣を振るうのではなく、世界の表と裏を知る必要があると諭す。そしてその頃、エルフ奴隷を救うため、華奈もまた別の現場で剣を振るっていた――。
学園で新たな青春を始める麗羅と、王国の闇を知り始める玲恩。英雄だった両親の子供たちは、それぞれ異なる道から、次の時代を生きる力を身につけていく。
※※※※※
【第97話 黄昏。】
大陸に平和が訪れた後も、華奈はフィルモアの特使として各国を巡り、強大な力を持つ匠と共に戦争を防ぐ存在となっていた。ウィッシュランド皇国では、王族や貴族と結びついた奴隷組織を一掃し、華奈の存在が両国の安定を支えていく。
やがてフィルモアでは世代交代の時が訪れ、ウィラードが退位。ラインハルトが新国王となり、メアリーはついに女王となる。娘の麗羅もまた結婚を控え、華奈とメアリーは、かつて共に戦った少女時代を懐かしみながら、これから祖母になる未来に笑い合う。
さらに魔人族領では、長年の平和交流を経て、フィルモアと魔人族の新たな関係が築かれていた。かつて世界の敵だった魔王レオンと匠は、ついに同じ杯を交わす。少年時代から匠の成長を見守ってきたレオンは、彼が大人になる日を待ち続けていたのだった。
そして数十年後。年老いた匠と華奈は、二人が人生を築いた港町バースで、穏やかな日々を送っていた。戦いも使命も終えた二人は、最後にお気に入りの高台から街を眺め、これまでの人生を「幸せだった」と振り返る。
その後、息子の玲恩が若き日の二人の姿を目撃する。そして両親を探しに行くと、匠と華奈はいつものベンチで手を繋ぎ、肩を寄せ合いながら、眠るように静かに息を引き取っていた。
数え切れない戦いを越え、世界を救い、愛する人々と共に生きた二人。彼らの最後は戦場ではなく、秋風が吹き抜ける穏やかな故郷だった――。
コメント
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うわあ……一気に最終章まで読んだ気持ちになりました。92話から97話まで、匠と華奈の人生がぎゅっと詰まっていて、胸が熱くなりました。結婚して子どもができて、年老いて静かに旅立つまで——「幸せだった」って振り返れる最後、本当に素敵です。二人の人生が、戦いだけじゃなくて、ちゃんと穏やかな日常で終わったのが良かった。麗羅と玲恩の成長も微笑ましくて、次世代に託す感じも好きです。耀聖さん、長編お疲れ様でした。