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この世には、差別というものが少なからず存在する。それは必ずしも、誰かの悪意から生まれるわけではない。多くの場合、ただ自然に、当たり前のように生まれる。
だが、この学園は違った。
意図的に「権力」を作り、意図的に「差」を与え、人々を選別する。
その名は、私立紋醍学園。
そして、この物語の舞台は――まさに、その私立紋醍学園である。
私立紋醍学園行きのバスには、今日、入試試験を迎える受験生たちが乗り込んでいた。
その中に、一人だけ、周囲に一切関心を示さず、本を読み続ける少年がいた。
朱紋盟華。この物語の主人公であり、「記憶」において、常人の域を逸した存在だ。
彼は幼い頃から、サヴァン症候群という病気を抱えている。一度見たもの、聞いたものを、忘れることができない。
少し時間が経ち、
バスは学園に到着した。
盟華
「……ここが、私立紋醍学園か。噂通りなら、普通の入試じゃないはずだけど……」
(少し周囲を見る)
「東と西に分かれて入場、だったよな。……なのに、看板が無い」
そう考えた瞬間だった。
上空を旋回していたヘリコプターから、一人の人物がパラグライダーで降下してくる。
ざわめく受験生たち。
試験官
「やあ。紋醍学園入試試験へようこそ。僕は…試験官という立場と言っておけばいいかな」
(ニッと笑う)
「――説明?いや、先に問題だ。
君たち、知ってるよね。東ゲートと西ゲートに分かれて入場する、って話。じゃあ問題!今、君たちが立っているのは――東ゲートかな? それとも、西ゲートかな?」
何時の間にか現れた巨大なスクリーンに、『East or West』と大きく映し出されていた。
試験官「制限時間は、15分。答えが分かった人は、僕か、近くのスタッフに――“証拠”と一緒に答えを提出してね」
試験官「あ、そうだ。ちなみに――僕たちスタッフの中に、嘘をつく人が混ざってるかもしれないからね。
……信じるかどうかは、君たち次第だけど」
盟華「『証拠』と答えか……つまり、当てずっぽうじゃ駄目って事だな」
周囲の受験生達はざわつき始めていた。「建物の向きが……」「太陽の位置が……」誰もが“場所”を見て判断しようとしている。
盟華は、ふと視線を上げた。巨大スクリーンの端。そして、周囲に立つ“スタッフ”達。
――同じ制服。
――同じ無表情。
――そして、誰一人として「東」「西」を口にしない。
盟華(……なるほど)
彼は、パラグライダーで降りてきた試験官を見た。
盟華「一つ、質問してもいいですか」
試験官「お、いいね!もちろん!質問は大歓迎だ!」
盟華「あなたに、『ここは西ゲートですか?』と質問したら……あなたは『はい』と答えますか?」
一瞬、空気が止まった。周囲の受験生達は、質問の意味が分からない。
だが、試験官は――
試験官「……はい」
盟華は、迷わず一歩前に出た。
盟華「証拠は、今の返答です。ここは――西ゲート」
どよめきが起こる。
「え?」「今ので?」「どういう意味だ?」試験官は、ゆっくりと笑った。
試験官「正解。通過だ、朱紋盟華」
盟華(“場所”を見ろなんて、誰も言ってない。この試験は…嘘が混じる前提で、それでも結論に辿り着けるかを見る問題だ)
盟華が軽く問題を突破した直後、反対側の東ゲートで一人の少女が空を仰いでいた。
彼女は足元に伸びる影と、巨大スクリーンの影の向きを、何度か見比べる。それから、スタッフの一人に声をかけた。
少女「太陽は東にあります。影は全部、西に伸びている。この配置なら……ここは東ゲートです」
スタッフは一瞬だけ、彼女を見る。
「……通過」
それだけだった。
試験官
「さて、ここまで来た君たちに、正式なお知らせだ」
盟華は少し背筋を伸ばす。
周囲の受験生たちも、一瞬、息を飲んだ。
試験官
「今から向かってもらうのは――
第一試験会場だ。」
第一話 完