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死ネタ 最強無敵連合
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青年が死んでから1週間が経った。死体は次の日には回収され、彼がいたという証は消えてなくなった。疫病の進行は早まり、赤子含め村の3分の1が持っていかれたようだ。これから朽ちていくこの村を見ると、どうにも青年が脳裏にチラつく。全てを諦めたような目をしたまだ若い人間を、忘れようとも無理なこと。
零した溜息を無視するように、そいつが口を開く
「 なぁ、また誰か来てるわコレ。 」
顔を顰め、今そいつ自身が口にした真実を、そいつも信じたくないのだろう。
目を細め、じっと扉を見つめると。期待とは裏腹にゆっくり扉が開いた。赤髪の、大人びた男性だった。光に反射にきらきらと星を飛ばす耳飾りが、どうにも綺麗で。吸い込まれるようなエメラルドの瞳に、また頭痛がした。
「 こんばんは。 キャメロンと申します。」
深々と頭を下げる壮年とも言えないほどだろう男。手には縄。すぐにでも朽ちる気があるのか、ゆっくりと青年が死んだ位置へ向かう。
「 いらっしゃい。 お前の命賭した所で意味はないよ。 」
「 さっさと帰れよ。 」
そんな俺たちの声が聞こえていないかのように、縄を結んだ。ゆっくり口を開き
「 村に帰ってもいつかは死にますよ 。笑」
くすりと緩んだその口もとは、とても幸せそうとはいえず。俺の隣にいるそいつも、不快そうに顔を歪めるだけだった。また、止められそうも無い。俺が言っていたのはこの事だったのかとでも思ったのか。そいつは俺の顔を見て、目を細めた。
「 疫病? 」
そいつが、ぽつりと男に問うた。眉を下げ、またくすりと笑うと
「 いいえ 。俺は元気ですよ。 」
その言葉に、俺達の顔が酷く歪んだのがわかる。まだ元気なこの歳の男を贄に出すのかと、村への失望感が高まる。老人は我が身愛しさに、未来あるものの命を簡単に奪うらしい。そんなもの、死んで当然だと思った。
「 ごめんな。俺達のせいで巻き込んだ。キャメさんを。 」
俺たちのせい?何を言っているのか、俺には分からなかったが。まるで冗談とは思えない重っ苦しい雰囲気に、開きかけた口を閉じる。
「 はは、よく分からないけど 。きっと俺は怒りませんよ。 」
男もまた、訳の分からない会話を交わす。軋むような頭を抑えながら、二人の会話をじっと聞いた。本当に、贄なんぞで収まるわけが無いのに。収めるわけが無いのに。
「 ではそろそろ。 俺は、死にたくなかったよ。 また今度、会えたらね。」
青ざめた顔で、軽快に手を振った。縄に首をかけ、またもがき苦しんで死んで行った。ぼさぼさになってしまった綺麗な髪を、整えようとしても触れられず。何も出来ないものだと、虚しくなった。
「 まだ思い出さねぇのな、 お前さ。」
物とかした男から目を逸らしたそいつが、そう告げた。
「 なんの事なのそれ。」
俺の質問は息のように空中に消え、月明かりに包まれる。毎度毎度、夜なのにこうも明るいのは何故だろうか。この村の未来は、俺たちの感情は。少しも明るくないと言うのに。皮肉なものだ