花束は花瓶に生けられている。
窓から入るすきま風に、真っ白なカーテンと花はサラサラと揺れる。
赤い花と水色の花。その隙間から覗く大きくて存在感のある緑色の葉。違和感があるはずの配色だが、私にはなぜか落ち着く色だった。
2つの気配は揺れながら、花瓶の近くで止まる。
まるで、
と言っているかのように。
赤い花を両手で優しく取ると、花はほつれて1本の糸になった。
その糸は、私の周りを回って、緑色の気配の周りを回って、水色の気配の周りを回る。そのまま、私の所へ戻ってきて糸の先と先が繋がった。
まるで、それは運命の糸のようだった。
何を表しているんだろうか。この”2人”は運命の人ってことだろうか。
また、白いカーテンがふわっと浮く。
そこには、驚きの光景があった。
カーテンの先は真っ暗で、小さな星が夜空に浮かび上がっていた。窓の中心には真ん丸な月が輝いていた。
夜だ。今、夜なんだ。
この世界に来てから、夜を見るのは初めてだった。いつも夕方頃に意識を失い、朝になっていた。
今日は、違うんだ。この世界の終着点がここにあるんだ。
2つの気配には、手や足があるかわからない。でも、私はとっさに”2人”の気配を掴んで窓の外へ飛び出した。
赤い糸は私たちの手の周りで楽しそうに踊る。これが正解だと表すように。
この世界で初めての外は、何か物足りないよう。私たちは花畑を超えて、川を超えて、草原を超えた。
その先には、ひとつの湖があった。湖の上には小さな街があった。
これは”私たち3人で創った街”。
“絆”が私の記憶を取り戻した。
風が吹いた。優しく。
コメント
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記憶取り戻したの...!? 良かったぁ...!ε-('ᵕ' ;)ホッ 赤い糸...なんて𝒓𝒐𝒎𝒂𝒏𝒕𝒊𝒄な...(?)