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その男が玄関口に立ってるのを見た瞬間、紗理奈は彼がどうして男娼になったのか、その理由を即座に理解した、そして心の中で賞賛した
素晴らしいわマダム・・・・
..:。:.::.*゜:.
紗理奈の目に飛び込んで来た彼が、これほど美しく目立ってなければ、もっと礼儀を正していたのに
思わず手首をひっぱって彼を中に引きずり込み、ガチャリとカギをかけた
まるで脱獄犯をかくまうように慌てて男を、家の中に引き入れた
今彼は腑抜けのようにただ突っ立って、自分を見つめている
それもそのはずだ、きっと彼の知能はとても弱いに違いない、そ・の・手・の職業に、優れた知性が必要な事はきっとない、堕天使の容貌に知性まで備わっていたら、世の中不公平だ
「まさか正面玄関から堂々と来るとは、思わなかったわ!」
紗理奈は美しい男に咎めるような口調で言った
しばらく呆けていた男は右、左と、キョロキョロ辺りを見渡して肩をすくめた
「他に入口を知らない 」
whyは?と首を傾げる
やっぱり頭が弱いんだわ、かわいそうに・・・・
紗理奈は少しこの男に同情した、やはりそ・う・い・う・職業を、してるんだから事情があるに違いない、紗理奈は出来る限りこの男に優しくしてやろうと思った、とにかく家の中に入れてしまえば安心だ
「・・・そう・・・いいわ、あなたが何時に来るかわからなかったから、ずっと朝から待ってたの 」
直哉はきょとん?とまた反対に、首を傾げてこの美女を見つめた
そんなにずんだ餅が食いたかったのか?
直哉はそう思って、微笑んで紗理奈に言った
ニッコリ「待たせて悪かったね」
紗理奈の心拍数がぶち上がった、真っ赤になった顔を見られたくなくて俯いて言った
「え~っと・・・・とりあえずソファーにでも座って、お茶でもいれるわ」
「ええっ?いいのかい?」
彼の人懐こい氷山をも溶かす勢いの笑顔が広がった、予想外の白い歯が眩しい、とても爽やかな笑顔だった
また紗理奈の心拍数は上がった
信じられない!笑顔も素敵なんて!
..:。:.::.*゜:.
ドキドキドキ・・・・「どうしよう!どうしよう!すんごいのが来た!すっごいのが来たわ!マダム!どうしましょう! 」
紗理奈は檻に捕らえられた熊のように、ウロウロキッチンを歩き回った
あの瞳!!ゴールドがかかった色素の薄い茶色い瞳、ぱっちり二重で睫が長く、少し危険そうだがたまらなく魅力的だ
彼としばらく見つめ合った紗理奈は、彼の瞳の奥へと全身が吸い込まれていくような気がした
それにあの髪!深みのあるロン毛の茶髪で、虎の縞のような金色のメッシュが等間隔に走っている
男性にしては少し長めだが、見苦しいほどではなく、むしろ野性的なこの男に良く似合っている
少し尖った顎、凛々しく上がった眉山、大きくてまっすぐな鼻、官能的な唇、全てのパーツがバランスよく整っている、左耳のシルバーの輪っかのピアスすらも、完璧な彼の顔を飾ってる
楊貴館のマダム鶴子の趣味が素晴らしいことを、認めずにはいられなかった
彼女が送り込んで来た男は、きっとマダムの館でもトップクラスの人だろう
ここ一週間男娼をオーダーしてから、紗理奈がずっと想像していたのはなんとなく、力仕事など出来ない色白でひょろっとした、細身の男性を思い描いていた
だって一夜限りの愛人ラマンなんて、そんなものじゃない?
しかし彼女は想像を大幅に修正しなければ、いけなくなった、作家なのに!
予想を上回る展開だ
紗理奈の想像していたひょろひょろ男子では、あの大柄で逞しく、それでいて顔は彫が深い、ハンサムな彼にとてもではないが太刀打ちできない
日本人かしら?・・・
彼はとても背が高く、スッキリと引き締まっていた、そして肩幅は紗理奈の家のドアを埋めつくしていた
「あなたは水谷紗理奈さんだよね?あの推理小説家の!」
カチャカチャトレーに、レモネードとシフォンケーキを二人分乗せて、手が震えないように直哉が座っている、ソファーにやって来た紗理奈に彼は、眩しい笑顔を向けた
心臓がドキドキする
「ええ・・・そうよ・・・私は作家です」
「俺は(ナオ)って呼ばれてるよ、下の名前は直哉で苗字は― 」
「待って!言わなくてもいいわ、お互いの事を語るのはやめておきましょう」
「そうかい?」
少し彼はガッカリしたような様子を見せた、もっともそれも教育されている演技かもしれないけど
コホンッ・・・「どうせ一夜限りの戯れなんですから」
紗理奈がみなまで言うなとばかりに、頬を染めてひとつ咳をした、自分はとても良いお客で後でクレームなど、言わないわよと彼に安心させてあげたかった
「一夜・・・限り・・・戯れ? 」
また彼が呆けたような顔をする、どうも会話がかみ合わない
ああっ・・・どうか彼に少しでも考える力がありますように
「マダム鶴子から聞いてないの?あなたの所は報・連・相が出来てないようね?いくらあなたのようなご職業で体が資本とはいえ、ビジネスに置いて大切な事よ?」
「え?マダム鶴子?・・・あの楊貴館の?」
直哉が驚いて目を見開いた、しょうがない子ねとばかりに、「めっ」と紗理奈が優しく言う
「他に誰がいるの?本当に何も聞いてないの?それとも忘れちゃった?」
「マダム・・・・鶴子・・・」
その時紗理奈をじっと見つめる彼の顔に、変化が現れた
今まで呆けたような当惑の顔は消え、今は何か興味深げにじっと紗理奈を見ている、何か企んでいるような気さえする
まるであるはずの無い頭が忙しく回転してるようだ
やがて彼が腕をソファーの後ろに回し、ゆったりもたれた、そして邪魔になるほどの長い脚を組んだ
面白がるように輝く悪魔的な瞳で見つめられると、思わず頬が火照り、紗理奈は少し居心地が悪くなった
彼は笑いをかみ殺して言った
「すいません・・・聞いたかもしれないけど、もう一度詳細を話して下さいますか?あ・な・た・の・口・から詳しく」